震災関連疾患疑いでリハビリテーション施行したものは約2割
当院でリハビリテーションを施行した入院患者において、原因疾患と震災との関連についてまとめたところ、次のようになった。
関連なし | 震災関連疑い | |
---|---|---|
3/12〜 | 18 | 18 |
4/1〜 | 26 | 13 |
5/1〜 | 39 | 5 |
6/1〜7/1 | 42 | 7 |
計 | 125 | 43 |
震災関連疾患を類型化して表示すると、以下のようになる。
他医療機関機能低下 | 肺炎 | 脳血管疾患 | 骨折 | 褥瘡 | |
---|---|---|---|---|---|
3/12〜 | 16 | 2 | 0 | 0 | 0 |
4/1〜 | 0 | 4 | 4 | 5 | 0 |
5/1〜7/1 | 0 | 1 | 10 | 0 | 1 |
計 | 16 | 7 | 14 | 5 | 1 |
全依頼件数168件中震災関連疾患は43件であり、全体の25.6%となる。なお、前年度同時期の依頼件数は174件であり、ほぼ同数の依頼となっている。震災直後に他医療機関の機能停止などの理由で転院してきた16名を除くと、27/152=17.8%となる。今後の精査は必要だが、概ね2割程度が震災関連疾患疑いとなる。
代表例を提示する。
# 肺炎
- 80代女性: 震災後避難所暮らしをしていた。3/15、肺炎を起こし、急性期病院入院。3/17、当院に転院。
- 90代女性: 在宅療養中。震災後食欲低下あり。4/1、肺炎で入院。4/9、出血性十二指腸潰瘍で急性期病院転院。
- 80代女性: 石巻で被災し、避難所暮らしとなった。3/25、肺炎を起こし、地元の病院を経て、3/28、仙台市内の急性期病院に移送。4/19、当院に転院。
# 脳血管疾患
- 70代女性: 自宅が全壊し、家族宅に身を寄せていた。3/24、心原性脳塞栓発症し、急性期病院入院。以前は認めなかった心房細動があった。5/12、当院転院。
- 70代男性: 自宅が倒壊し、避難所暮らしをしていた。4/11、アテローム血栓性脳梗塞を発症し、急性期病院入院。5/19、当院に転院。
- 80代女性: 自宅被災後、避難所暮らしをしていた。ペースメーカー植込み後でワーファリンコントロール中だった。身体ひとつで避難した。1週間経ってから家族がかかりつけ医院に薬をとりに行った。3/26、心原性脳塞栓発症し、急性期病院入院。5/20、当院転院。
- 70代女性: 石巻在住。被災後体育館の避難所で生活していた。5/2、脳梗塞発症。地元の病院を経て、仙台市内の急性期病院に転送された。たこつぼ型心筋症、うっ血性心不全を合併していた。出血性梗塞となり、5/17、開頭血腫除去術を施行。6/27、当院に転院。
# 骨折
- 80代男性: 3/12の余震時に転倒し、大腿骨頚部骨折を受傷。急性期病院で手術を受けた後、4/5、当院に転院。
- 90代女性: 有料老人ホーム入所中。震災後ホールに集められ過ごしていた。3/16、自室に戻ろうとして転倒。急性期病院で内固定術を受けた後、4/12、当院に転院。
# 褥瘡
- 80代男性: 在宅療養中。停電後エアマットがこわれ、仙骨部に褥瘡を生じた。徐々に悪化したため、4/22、当院に入院。
環境の激変を受け、高齢者が体調を崩す例が多い。診療圏以外の患者も目立つ。
当院のデータは、氷山の一角に過ぎない。リハビリテーション適応があると考えられ紹介されてきた患者だけみてもこれだけの数となる。通常ならば、ベッドに余裕ができる夏場にも関わらず、転院待機患者が急増している。
仮設住宅が整備されつつあるが、経済的問題や進まないがれき処理などの問題があり、被災者の生活環境は決して改善されていない。今後も震災関連疾患が減らないのではないかと危惧する。全国からの医療支援終了に伴い、一時的に増加した医療供給量も減少してきている。再開できない医療機関も多い。東北地方はもともと医療過疎地域だった。需要の増大に応えるための余力はあまりない。
震災関連死や関連障害は人知れず進行する。助けられるはずの人が亡くなったり、要介護者が増大したりすることを避けるためには、共通認識を持ち、具体的に対策を立てていく必要がある。