ザッケローニ監督の自伝

 サッカー日本代表が、見事アジアカップの頂点に立った。オーストラリアに攻め込まれる中、GK川島のファインセーブに何度も助けられ、李忠成が延長後半に上げた虎の子の1点を守り抜いた。終了と同時に、ピッチの選手がザッケローニ監督のところに駆け寄り、飛びつくのをみて、選手と監督の強い絆を感じた。


ザッケローニの哲学

ザッケローニの哲学


 ザッケローニ監督の自伝を決勝前に読んだ。本書を読むと、ザッケローニの叩き上げの人生がわかる。プロサッカー選手を目指しながら肺の病気で断念したこと、保険代理店業などを経てサッカー育成組織の監督となり中小クラブで経験を積んでいくこと、現場に介入するチームオーナーや個人主義の選手に悩まされながらチームを成熟させていったこと、そして、弱小クラブであるウディネーゼを率い昇格したばかりのセリエAで好成績をおさめたことまでが記されている。なお、本書が日本で出版されたのは2010年12月28日であるが、イタリアで原書が出版されたのは1998年であり、ACミランセリエAを制覇した以降のことは記載されていない。
 ウディネーゼがあるウディーネ県はイタリア北東部にあり、ヴェネチアに隣接しており、人口は約53万人ほどである。Jリーグのチームで例えると、ウディネーゼモンテディオ山形みたいな位置づけとなる。ついでに調べてみると、小林伸二モンテディオ山形監督は、ユースやサテライトの監督を経験した後、J2大分トリニータをJ1に昇格させ、その後、再び、地域リーグJFLなどを経て、J2山形をJ1に昇格させ、現在に至っており、ザッケローニ監督の経歴とよく似ている。例えていうと、ザッケローニ監督の業績とは、モンテディオ山形をJ1上位常連チームに育て上げ、その後、低迷していた浦和レッズに引き抜かれ、1年でJ1制覇を果たしたようなものといえる。


 ザッケローニ監督は所属したチームの名前を列挙し、賛辞を述べることを繰り返している。アジアカップでも、監督の信頼を感じた選手が活躍をしている。控えの選手に対する配慮も忘れない。

 川島が日本のメディアから批判されていたことは、正直知らなかった。わたしはまだ日本語が読めないので。川島についてはワールドカップ(W杯)でも素晴らしい活躍を見せているし、彼だけではなく、チームには3人の素晴らしいGKがいる。2人(川島と西川のプレー)は今大会で見てもらえたし、3人目の権田は非常に将来性のあるGKだ。わたし自身はあまりGKを替えるのは好きではない。ミスが目立つポジションなので、失点すれば批判されやすいが、わたしは(すぐに替えることを)好まない。
 川島は、この間(の韓国戦)もずっと落ち着いていたし、わたしの信頼を一身に受けているから冷静でいられるのだと思う。現在プレーしているチームでは、チーム事情がいろいろあって大変だが、よくやっていると思っている。彼の準決勝、決勝の活躍によって、メディアの批判を払しょくできたことについては、非常にうれしい。今日の試合についても、フィジカルの強いオーストラリアが相手ということでGKの仕事は多かったが、本当によくやってくれたと思っている。

http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/japan/text/kaiken/201101300001-spnavi_1.html

 質問に答える前に、この場を借りてけがのためにチームを離れた選手たちにも感謝したい。具体的に名前を挙げると、槙野、酒井、松井、香川。彼らの力も今大会の優勝に貢献してくれたと思っている。また出場機会を与えることができなかった2人の選手、森脇と権田。彼らも素晴らしいチームスピリットで参加してくれた。ありがとうと伝えたい。

http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/japan/text/kaiken/201101300001-spnavi_2.html


 ザッケローニ監督の人心掌握術には素晴らしいものがある。サッカーの戦略も一流である。発展途上の日本代表にとって最適の監督ではないかと感じている。3年後のブラジルW杯が今から楽しみである。