ライフイノベーションWGにおけるリハ日数制限論議

 行政刷新会議規制・制度改革委員会(平成22年3月~平成24年12月) - 内閣府、ライフイノベーションWGにて、「医療保険におけるリハビリの日数制限の見直し」の論議が進められている。ライフイノベーションWG(第9回) 議事次第 - 内閣府資料3 規制・制度改革検討シート(案)の35〜37ページに次のような記載がある。

【ライフイノベーション 9】
事項名 医療保険におけるリハビリの日数制限の見直し


(中略)


改革案 医療保険におけるリハビリについては、治療の継続により状態の改善が期待できる場合の他、悪化を防止し、機能を維持することが必要で、かつ期待できると医師が判断した場合も日数制限なく受けられることが必要であるため、次期診療報酬改定で日数制限を撤廃することを検討する。<平成 23 年度検討、結論>


 手放しで喜んで良いものかどうか気になり調べてみたところ、第6回ライフイノベーション WG 議事概要の25ページに、「医療保険におけるリハビリの日数制限の見直し」に関する質疑が掲載されていた。

○中村委員 15番です。「医療保険におけるリハビリの日数制限の見直し」。私は高齢者の住まいの相談を毎日受けていて感じることが、例えば東京で言えば、有名な初台リハビリ病院に入院したけれども、私はもう30日で強制的に退院させられる、あるいは重度でも50日で退院させられる。それで、初台病院に入院しているときは、リハビリを午前中も午後もやっていたからすごく回復した。ところが、強制退院で次のところに行ったら、1週間に10分か20分が2回ぐらいしかないので、もうどんどんもとに戻ってしまったという御相談を毎日のように受けているわけです ね。
 ここは、だから、やはり医療費が高騰するから、もとに戻すということはあり得ませんけれども、例えば、自分で負担すれば、3割負担の人がその倍の6割負担すればあと何日延長とか、何かつくらないと、どんどんもとに戻ってしまう人ばかりなんですね。そうすると、リハビリ病院で一生懸命リハビリした効果が無駄になっているというのが現実でございまして、ここもちょっと何かいい方法があったらなと思います。
○神野委員 ちょっとそれの事例ですけれども、私ども、実はグループで公設民営のフィットネスをやっております。そこに理学療法士を派遣して、病院で日数の関係でリハビリできなくなってしまった人は、フィットネスで、公設民営ですから利用料金も安いですので、そこのフィットネスで理学療法士が行きますからやりましょうよとやったのですが、結局、破綻しました。結局、保険より高いと誰も利用していただけなかったのですが、何も全部医療の方だけではなくて、いわゆる健康増進施設とのコラボレーションなんかもありなのかとは思うのですが、そこを逆に、一部医療保険を使えるようにしてやるとか、あるいは一部介護保険が使えるようにしてやるとかというような議論もあってもいいのかなと思います。
○土屋主査 リハビリも混合診療です。


 おかしな方向に議論が進んでいる。ライフイノベーションWG(第9回) 議事次第 - 内閣府資料1 制度改革の方向性をみると、医療保険改革の全体像として次のような記載がされている。

 国民皆保険制度はこれを堅持しつつ、医療においては技術の進歩が国民医療費の増加要因になるとの特性を踏まえ、超高齢社会を迎えるにあたり、予防医療も含めて真に国民に必要な医療を整理し、公的保険の適用範囲を再定義することが必要


 「医療保険におけるリハビリの日数制限の見直し」の見返りに、混合診療が導入される危険性があると私は判断した。医療や介護を成長分野として育成するために、リハビリテーション部門が規制緩和の対象になっているのではないかという危惧が拭いきれなくなった。医療保険を使用できるようにするが自己負担割合を引き上げる、フィットネスなど関連分野にも医療保険を一部適用するなど、リハビリテーションの本質とは無関係な議論がされていることに、強い不安を感じる。