自殺未遂は精神疾患起因と判断しろという厚生労働省の通知

 自殺未遂には健康保険が適用されないことになっている。このことに関して、2010年5月28日、厚生労働省から自殺未遂による傷病に係る保険給付等について |報道発表資料|厚生労働省という通知が出された。

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 添付文書、自殺未遂による傷病に係る保険給付等について(PDF:38KB)を読むと次のような記載がある。

自殺未遂による傷病に係る保険給付等について


 健康保険法(大正11年法律第70号)、船員保険法(昭和14年法律第73号)、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)及び高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)では、故意に給付事由を生じさせた場合は、その給付事由についての保険給付等は行わないことと規定していますが、自殺未遂による傷病について、その傷病の発生が精神疾患等に起因するものと認められる場合は、「故意」に給付事由を生じさせたことに当たらず、保険給付等の対象としております。
 今般、この取扱いについて改めて周知しますので、適切に対応していただくとともに、都道府県国民健康保険主管課(部)におかれましては、管内の保険者等に対して、都道府県後期高齢者医療主管課(部)におかれましては、管内の市町村後期高齢者医療主管課(部)に対して、周知をお願いいたします。


(参考)
「法第六十条ノ適用範囲ニ関スル件(昭和13年2月10日社庶第131号)」

健康保険法第六十条ノ適用範囲ニ関スル件
[昭和一三年一月二八日健給第二四二号保険院社会保険局長あて滋賀県知事照会]


 被保険者旧臘某日午後一時頃自転車ニテ市内疾走中挙動不審者トシテ警察官ノ取調ヲ受ケタルモ何等容疑ノ点ナク釈放サレタルニ矢庭ニ逃走シ附近ノ自動車修繕工場床下ニ逃込ミ鋳物用破片ニテ前頸部ニ傷付ケ横舌骨下端甲状軟骨上部ニ於テ皮膚並頚部諸筋ヲ約一六センチノ長サニ切リ深サ気管ハ全部開放食道ノ一部ヲ損傷出血甚タシク直チニ日赤滋賀支部病院ニ収容サレ入院承認ヲ申請シ来リタルヲ以テ所轄署ニ付テ実情調査候処直接原因卜認メラルヘキ事由ナク平素小心者ナルヲ以テ発作的精神異常ニ依リ自殺ヲ企テタルモノト認ムル旨回答有之如斯場合ニ於テハ法第六十条ニ所謂故意ニ事故ヲ生セシメタルモノニシテ保険給付ハ為スヘカラサルモノトシテ処置可然モノト思料致候得共事案少シク異例ニ属シ且ツ昭和二年十一月十二日保理第三六九二号東京モスリン紡績株式会社宛回答ノ次第モ有之聊カ疑義相生シ候条何分ノ御指示相煩度此段及伺候也


 戦前の規定が未だに有効ということである。
 あげられている事例は、不審者が警察の取調べ後に逃走し、自動車修繕工場の床下に逃げ込み、鋳物用破片にて頚部を切り開いたというものである。この場合でも、平素小心者だったので発作的に精神異常をきたし自殺を企てたという理由で保険給付が認められている。
 自殺を企てる者はすべからく精神異常があると判断すべき、ということを厚生労働省は伝えたいようである。ならば、初めから自殺未遂は保険給付対象であるということを確認した方が良い。誤解を招く表現は速やかに訂正すべきである。