反復経頭蓋磁気刺激と脳の可塑性

 反復経頭蓋磁気刺激(Repetitive transcranial magnetic stimulation;rTMS)という治療法がある。rTMSは、脳の可塑性を引き起こし機能障害を回復させることを目的に行われる。左右半球の対立モデルから、脳卒中患者の運動麻痺は、障害側運動野からの出力減少および健側運動野からの過剰な脳梁抑制によって起こると考えられている。低頻度rTMSが刺激部位を抑制することを利用し、健側運動野に低頻度rTMSを行い、同部位の興奮性を低下させる。
 同様に、CI療法で健側を拘束する理由として、健側大脳半球への感覚入力を抑制し、障害側大脳半球への感覚入力を増強させることがあげられている。
 東京慈恵医科大学リハビリテーション科の安保雅博先生らは、rTMSとCI療法を組み合わせた上肢麻痺機能改善への研究を行っている*1。CI療法に比べ、健側上肢の拘束時間が短く、患者のストレスも少ない一方、上肢機能の改善が認められるなどと報告している。


 日経スペシャル ガイアの夜明け : テレビ東京という番組で紹介されたこともあり、東京慈恵医科大学リハビリテーション科は治療を希望する患者であふれかえっている。東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座のHPをみると、次のような記載がされている。

TMS治療(経頭蓋磁気刺激治療)を希望される皆様へ


現在、外来は大変混雑しています。受診日に必ず診察はいたしますが、診察まで8時間以上お待ちいただく場合もございます。できましたら、適応基準を満たさない方の受診は控えていただければ幸いに存じます。
また、TMS治療は入院治療にて行います。
現在のところ、約3年の入院待ちになることもご了承ください。


 当院外来にも時々rTMSを希望される患者が来院される。まだ研究段階で普及していないことを説明したうえで、東北大学医学部リハビリテーション科肢体不自由部門にご紹介するようにしている。東北地方では、出江紳一教授のグループが最も熱心に行っている*2
 脳卒中の上肢麻痺そのものに対する治療法開発が進んでいる。我々のような一般病院でも、新しい知見を積極的に取り入れていくように心がけたい。