ビスホスホネート製剤使用上の注意

 ビスホスホネート製剤の添付文書「使用上の注意」において、重要な改訂があった。
 フォサマック®錠35mg 添付文書情報(PDF)をみると、次のように記載が変更されている。

2.重要な基本的注意
(1)〜(5)略(変更なし)
(6)本剤を含むビスホスホネート系薬剤による治療を受けている患者において、投与経路によらず顎骨壊死・顎骨骨髄炎があらわれることがある。報告された症例の多くが抜歯等の歯科処置や局所感染に関連して発現している。リスク因子としては、悪性腫瘍、化学療法、コルチコステロイド治療、放射線療法、口腔の不衛生、歯科処置の既往等が知られている。
本剤の投与にあたっては、患者に対し適切な歯科検査を受け、必要に応じて抜歯等の顎骨に対する侵襲的な歯科処置を投与前に済ませるよう指示するとともに、本剤投与中は、歯科において口腔内管理を定期的に受けるとともに、抜歯等の顎骨に対する侵襲的な歯科処置はできる限り避けるよう指示すること。また、口腔内を清潔に保つことや歯科受診時に本剤の使用を歯科医師に告知するなど、患者に十分な説明を行い、異常が認められた場合には、直ちに歯科・口腔外科に受診するよう注意すること。〔「重大な副作用」の項参照〕
(7)ビスホスホネート系薬剤を長期使用している患者において、非外傷性の大腿骨転子下及び近位大腿骨骨幹部のストレス骨折が発現したとの報告があるので、X 線検査等を実施し、十分に観察しながら慎重に投与すること。この骨折では、X 線検査時に骨皮質の肥厚等、特徴的な画像所見がみられ、完全骨折が起こる数週間から数ヵ月前に、罹患部位の前駆痛があるため、そのような場合には適切な処置を行うこと。また、両側性の骨折が生じる可能性があることから、片側で骨折が起きた場合は、他方の大腿骨の画像検査も行うこと。

 赤字の部分が変更されたところである。


 ビスホスホネート製剤では、食道炎・潰瘍など食道局所における副作用が最も有名である。起床してすぐにコップ1杯の水とともに服用し、30分経ってからその日最初の食事を終えるまで横にならないこと、という使用上の注意がある。内服方法が面倒であり、寝たきり患者には使用できない。最近開発された週1回の製剤でないと、コンプライアンスは保てないという感想を持っている。
 顎骨壊死に関しては、ビスフォスフォネート系薬剤の投与を受けている患者さんの顎骨壊死・顎骨骨髄炎に関する注意のお願いに詳しく記載されている。ビスホスホネート製剤を使用する前には、必ず、口腔内のチェックをすることが義務づけられたことになる。幸い、当院には附属歯科がある。大腿骨頚部骨折患者のリハビリテーションにおいては、抜歯が必要かどうか判断してから、投薬を行うことを心がけている。なお、ビスホスホネート製剤内服中の患者が抜歯などの侵襲的治療を行う場合には、3ヶ月間の休薬が求められる。
 非外傷性の大腿骨転子下及び近位大腿骨骨幹部のストレス骨折に関しては、http://mainichi.jp/enta/book/mmj/news/20100617org00m100010000c.htmlの296〜297ページに特集があった。代表的な論文として、http://content.nejm.org/cgi/content/abstract/362/19/1761が紹介されている。
 MMJでは、次のようなまとめがされている。

「ビスホスホネートは大腿骨頚部骨折に対する予防効果が証明されているが、これらの頻度の高い骨折のリスクに比べ、非定型的な大腿骨転子下骨折のリスクは低い」という理解が、当面妥当と思われる。

 こちらの副作用に関しては、神経質にならなくても良いと判断する。ただし、非外傷性骨折があった場合には、原因のひとつとしてビスホスホネート製剤の副作用も考えるという姿勢が求められる。
 骨粗鬆症治療薬として、ビスホスホネート製剤の重要性は増している。しかし、使用上の注意が煩雑である。骨粗鬆症を専門的に取り扱う診療科以外は、扱いに苦慮する薬剤といえる。