気胸事故を起こした鍼灸整骨院院長にみる職業倫理の低さ

 鍼治療に伴う死亡事故で、当事者の柔道整復師だけでなく、鍼灸整骨院院長も逮捕された。

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 大阪府池田市の「メイプル鍼灸(しんきゅう)整骨院」で昨年12月、はり治療を受けた女性(当時54)が死亡した事件で、大阪府警は23日、元副院長の岡村祐樹容疑者(26)=兵庫県西宮市大屋町=を業務上過失致死とあん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師等に関する法律違反の疑いで15日に、院長の吉田起祥(きよし)容疑者(37)=同府箕面市桜ケ丘2丁目=を同法違反の疑いで23日にそれぞれ逮捕したと発表した。


 捜査1課によると、岡村容疑者は2008年4月から無免許ではり治療をし、昨年12月15日、女性の背中に針をうつ際に過って肺を傷つけ、低酸素脳症で死亡させた疑いが持たれている。吉田容疑者は、無免許の岡村容疑者にはり治療をさせた疑いがある。岡村容疑者は柔道整復師の免許を持つ一方、はり治療の専門学校に通学中だったという。


 同課によると、岡村容疑者は「患者さんに頼まれてはりをうった。他に数人にはり治療をしたことがある」と容疑を認めつつ、「独断だった」と吉田容疑者の関与を否定。吉田容疑者は「知らなかった」と否認している。


 同課は、吉田容疑者が女性の死亡直後に患者の診療受付記録を破棄していた、と説明。複数の患者や従業員から「岡村容疑者のはり治療は院長も知っている」という証言も得られたとしている。

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK201002240032.html


 本記事を読んで驚いたことがいくつかある。
 まず、事故を起こした当事者である柔道整復師が、「元」副院長という役職者だったことである。てっきり、苦学生鍼灸整骨院でアルバイトをしながら勉強していたのかと思っていた。利用者にアピールするために肩書きだけつけたのかもしれない。しかし、副院長となれば通常は管理業務を行うポストである。小なれど組織トップの犯罪ということになる。
 鍼灸整骨院院長は、「元」副院長が無資格で鍼治療をしていることを「知らなかった」と言っている。TVニュースでみる限り、さほど広くはない。同じ場所で働いていて知らなかったでは済まされない。まして、「元」副院長ははりの専門学校に通っていた。履歴書も見ずに、採用したのだろうか。
 鍼灸整骨院院長は、証拠隠滅も行っている。カルテ保全という意識もない。「元」がついていることからも分かるように、問題を起こした柔道整復師を早々にクビにしている。トカゲの尻尾切りですませると思ったらしい。
 この鍼灸整骨院院長の愚行にはあきれるしかない。起こした事故の重大性を認識し、被害者に対し誠実に対応するという姿勢が見られない。同種の事故を防ぐために情報開示をすることもしない。本事件は、職業倫理意識の低さから引き起こされた事故としか言いようがない。