予算不足を理由として障害者スポーツ大会出場辞退

 障害者スポーツのあり方を考えさせる報道があった。

 10ー12日に新潟県で開かれる第9回全国障害者スポーツ大会(トキめき新潟大会)の団体競技部門で、福岡県の知的、聴覚障害の男子2チームが、九州地区大会で優勝したにもかかわらず、県から予算不足を理由に出場を辞退させられたことが分かった。県は「大会の趣旨は競技で勝つことではなく、障害者の社会参加」と説明するが、関係者からは「実力で勝利しても選手として扱われないのか」と憤りの声が上がっている。【夫彰子】

http://mainichi.jp/seibu/news/20091009sog00m040004000c.html


 全国障害者スポーツ大会は、厚生労働省日本障害者スポーツ協会、開催地主催者の共催で行われている。その趣旨は次のように説明されている。

 全国障害者スポーツ大会は、1965年から身体障害のある人々を対象に行われてきた「全国身体障害者スポーツ大会」と、1992年から知的障害のある人々を対象に行われてきた「全国知的障害者スポーツ大会」を統合した大会として、2001年から国民体育大会終了後に、同じ開催地で行われている。
 大会の目的は、パラリンピックなどの競技スポーツとは異なり、障害のある人々の社会参加の推進や、国民の障害のある人々に対する理解を深めることにある。


 福岡県の担当者は、次のように発言している。

 県障害者福祉課は「全国大会に行きたい気持ちは分かるが、大会の趣旨は障害者の社会参加。限られた予算で幅広い人に全国大会を経験してもらうための判断だった」と話す。

http://mainichi.jp/seibu/news/20091009sog00m040004000c.html


 実は、前身の「全国身体障害者スポーツ大会」の時代、大会への参加は生涯に1〜2回と制限されていた。私も大学にいた頃、ボランティアとして同行したことがあるが、当たり前のように自治体職員から参加制限について説明をされたことを覚えている。
 陶山 哲夫: “障害者スポーツの最近の動向”. 理学療法科学, Vol. 21: No. 1; (2006). 99-106 .によると、障害者スポーツは、リハビリテーションスポーツ、生涯スポーツ(市民スポーツ)、競技スポーツに大別される。厚生労働省:政策レポート(障害者スポーツ)には、競技スポーツとしての障害者スポーツの概要が紹介されている。
 障害者スポーツ大会を、リハビリテーションスポーツや生涯スポーツ(市民スポーツ)の普及の一環として位置づけるのか、競技スポーツの祭典とするのかについて、関係者間で明らかな齟齬がある。団体競技の場合、厳しい予選を勝ち抜かないと、出場権を得られない。障害者スポーツ大会は既に競技スポーツ者のための大会になっていると認識した方が良い。
 管轄団体が厚生労働省であることも問題である。一般スポーツと同じように文部科学省所管とし、スポーツ振興法のもと、障害者スポーツを普及させる方向に向かうべきではないかと考える。