ブルーマウスに思うこと

 http://wiredvision.jp/news/200907/2009072923.htmlはてな人気エントリーで取り上げられ、ブルーマウスが一時話題になった。

脊髄損傷を受けたラットに青色色素を投与すると、投与されなかったラットよりはるかに早く回復したのだ。しかも、研究者から報告されている副作用は1つだけーーラットが青く染まるということだけだ。


(中略)


米国では、毎年およそ1万2000人が脊髄に損傷を負っている。原因の多くは自動車事故や悲惨な落下事故だ。最初に脊柱や首へ衝撃が来た後、脊髄周辺に生じる腫れによって血液の供給が阻害されるため、さらに神経細胞が死滅する結果を招く。損傷を受けた直後にステロイドを投与すると効果の見られる患者も少数いるが、大部分は、この二次的な炎症のせいで症状が悪化し続ける。


(中略)


研究者たちは、「P2X7」と呼ばれるATP受容体を遮断することで、脊髄損傷に起因する炎症を大きく防げられることを見いだした。だが今まで、この受容体を遮断できる、臨床的に有効な薬品は特定できなかった。


P2X7受容体に似た構造の化学物質を探す過程で行き当たったのが、毒性がないとして、1928年に米食品医薬品局(FDA)の承認を得ている青色1号だ。


「米国では1人が1日におよそ14ミリグラムの青色1号を摂取している。青い食品には何にでも入っている。チョコレートのM&M's、ゲータレード、ジェロー。米国では年間1億ポンド(およそ4500万キログラム)が食べられており、毒性がないことは証明されている」と、Nedergaard氏は語る。


(中略)


この化合物が脊髄損傷後の回復を向上させられるかどうかをテストするために、(麻酔をかけた)ラットの背骨に10グラムの重りを落として損傷させ、その15分後に、青色1号とほぼ同じ構造の『ブリリアントブルーG』を静脈に注入した


青色色素を投与されたラットは、投与されなかったラットよりずっと回復が早かった。6週間たつと、投与されたグループは足を引きずりながらも歩けるようになったが、投与されなかったグループでは、歩けるまでに回復したラットはいなかった。


[損傷後4時間以内に投与を行なえば、二次障害の炎症を抑えて永久的な麻痺を回避できるという。なお、皮膚や目は投与の1週間後に通常の色に戻ったが、6週間後に解剖したところ、脊髄は青いままだったという]


 気になったことがひとつある。食品として有害性が低いと証明されていても、それを静脈内に注入して良いかどうかは別問題である。論理に飛躍がある。また、中枢神経系に沈着するとなると、脳障害を引き起こさないかどうかが問題となる。いずれにせよ、臨床応用まではかなり時間がかかる。
 はてなブックマークでは、ブルーマウスを見て、「キュート」とか「可愛い」という意見が多数寄せられた。残念ながら、1週間で皮膚の色は元通りになるということで、商品として売り出すことは難しい。