新型インフルエンザ、検疫確認より早期の感染者報告を隠蔽

 厚労省の情報操作が明らかになった。

 厚生労働省は4日、国内で確認された新型の豚インフルエンザ感染者について、確定できた最も早い発症日は5月5日だと発表した。神戸市内の男子高校生。これまで、同月9日に成田空港での水際検疫で確認された感染者を国内初としてきた。それ以前に検疫をすり抜け、ウイルスが国内に入り込んでいたことになる。


 厚労省によると、この男子高校生は渡航歴がなく、国内の誰かから感染したとみられる。このため、同省は5月5日以前にも国内に感染者がいたと推測している。


 男子高校生は5日にインフルエンザの症状を発症し、翌6日に同市内の医療機関を受診。簡易検査で季節性インフルエンザと診断された。当時、厚労省は米国などへの渡航歴がないと新型インフルを疑う対象にはしておらず、遺伝子検査はしなかった。その後、男子高校生は完治した。


 しかし、5月16日に神戸市内で渡航歴のない高校生の感染を国内で初めて確認。これを受け、市の調査の一環で、男子高校生の検体を保管していた医療機関が市環境保健研究所に遺伝子検査を依頼、20日に感染が確認された。


 結果はその日のうちに厚労省にも報告されたが、公表してこなかった。厚労省は「国内の発症状況の全体像を確認したうえで、公表すべきだと考えた」と説明。6月4日の会見で5月5日以降の日別発症動向で、ピークは73人が発症した5月17日としていた。


 男子高校生と、その後にあった神戸市内の高校生らの集団感染と関係があるか、同市と調査を進めているという。


 朝日新聞の集計によると、4日午後9時現在、国内の感染者は16都府県で計410人。(笹井継夫、野瀬輝彦)

http://www.asahi.com/national/update/0604/TKY200906040241.html


 渡航歴のない国内発生例が5月16日に明らかになった直後の5月20日には、検疫確認例より早期の国内発生例があったことを厚労省は確認していた。しかし、検疫が有効であったと主張したい官僚はこれまで発表をしなかった。
 検疫での発見者より早期に国内で感染報告があったことは、重要な情報である。しかし、検疫が無意味であったことを証明するこの情報を2週間も隠しとおした。そして、新型インフルエンザへの国民の関心が下がり始めた時期になって初めて報告した。
 明らかな情報操作である。隠蔽工作と言われても仕方がない。厚労省官僚は、正確な情報を国民に知らせるより、自らの保身の方を優先させるという悪癖が染み付いている。