新型インフルエンザに対するワクチン開発の情報

 新型インフルエンザに対するワクチン開発の情報が、インフルエンザA(H1N1)−臨床管理:暫定的手引きに掲載された。

新型インフルエンザA(H1N1)に対して効果的なワクチンはもう使えますか?


いいえ。しかし、現在そのようなワクチンを開発している最中です。全く新しいインフルエンザワクチンを完成するには、5〜6か月かかります。

現在、使用可能な季節性ワクチンは、インフルエンザA(H1N1)に対する防御効果がありますか?


最近の最も信頼性の高い科学的エビデンスでは、季節性インフルエンザワクチンはインフルエンザA(H1N1)に対してほとんど、あるいはまったく防御効果はないであろうということが示唆されています。

なぜWHOは、季節性インフルエンザワクチンからインフルエンザA(H1N1)ワクチンの製造に切り替えるよう、ワクチン製造業者に依頼しないのですか?


WHOは、季節性インフルエンザが毎年300万人から500万人の重症患者を引き起こし、25万人から50万人の人々を死に至らしめることから、季節性インフルエンザワクチンの製造をやめることを推奨しません。従って、季節性インフルエンザに対する継続したワクチン接種は大切です。速く増殖するワクチン候補ウイルス株を開発するためにかかる時間を考えると、季節性インフルエンザの生産を直ちに止めることでパンデミックワクチンをより早く生産させることにはならないでしょう。現時点では、WHOは大規模なワクチン生産が必要とされたときにすぐに取り掛かれるように、ワクチン製造業者と緊密に連携しています。

インフルエンザワクチンの製造能力は、地理的にどのような配分になっていますか?


今日の世界的な生産能力の90%近くがヨーロッパと北アメリカ、さらにかなりの製造能力がオーストラリアと日本に分布しています。しかしながら、過去5年間、途上国の6つの製造業者がインフルエンザワクチンを生産する技術を獲得し始め、WHOからの技術的および資金的援助を受けています。

全ての人に十分なインフルエンザA(H1N1)ワクチンがありますか?


パンデミックインフルエンザに対して、世界の人々に接種するに十分なワクチンを作るためにかかる推定時間は、ワクチン製造業者が効果的なインフルエンザA(H1N1)の1回接種分にどのぐらいの活性物質(抗原)が必要か、そして一人につき1回で良いのかあるいは2回必要なのかを決めることができるまでわかりません。


過去2年間、アジュバンドの発見と使用を含む研究の推進とともに、生産施設の拡大により、インフルエンザワクチンの生産能力は、飛躍的に増加しました。アジュバンドは、ワクチンをより効果的なものにするために、ひいては活性物質(抗原)を節約するために添加される物質です。

WHOのワクチン使用における公平性に関する展望はどのようなものですか?


WHO事務局長は、現在の状況への対応として、国際的な団結を呼び掛けています。WHOは、対応手段に対する全ての国々における公平で平等なアクセスという目標を、最も優先度の高いものとして掲げています。WHOは、製造業者に対して、将来的なインフルエンザA(H1N1)ワクチンは国連機関の買い上げとすることの要求を出しています。加えて、インフルエンザA(H1N1)ワクチンを前もって購入する契約を行なっている国からの寄付は望まれるものであり、途上国にとってより無理なく買えるようにするためにも、ワクチン製造業者との段階的な価格の調整が議論される予定です。

例年、季節性ワクチンはどのぐらい使用されていると推定されていますか?


現在のところ、毎年、年間5億接種未満です。


 新型インフルエンザと季節性インフルエンザ両者をにらんで、ワクチン生産が進められている。北半球の流行シーズンまでにワクチン生産が間に合うかどうかというペースである。安全性を確保しながら、流行型を見極めるという難しい判断が迫られる。
ワクチン製造も市場原理に左右される。大量に生産しても、接種量が予想を下回ると、業者が経済的ダメージを被る。新型インフルエンザに対する市民の不安が高まっていることを考慮すると、ワクチン製造業者が安心して生産できるように、資金面での措置も必要になってくる。また、発展途上国にもワクチンが配分されるように公正さの確保も求められている。
 新型インフルエンザに対する最も強力な予防策としてのワクチン製造に対する期待は大きい。新型インフルエンザという地球規模の課題に対し国際協力が機能するかどうかを見極める上で、ワクチン開発は試金石となっている。