要介護高齢者、看護・介護職の結核対策が急がれる

 特養ホームで、入所者と職員の結核集団感染が明らかになった。

結核14人感染3人死亡 一関の特養ホーム


 一関市川崎町の特別養護老人ホームで、二月から四月にかけて八十 ー 九十歳代の入所者四人が結核を発病し、そのうち三人が死亡したことが一日分かった。死因は肺炎などで、結核との因果関係は不明。その後四月の検査で、職員十人の感染が確認され、発病予防の治療を行っている。保菌状態では感染しないため、発病しなければ拡大の恐れはないという。県内の結核集団感染は調査を開始した一九九二年以来三件目。


 県保健衛生課によると、最初に発病したのは八十歳代の女性。昨年十一月ごろから体調が優れず、今年二月に市内の医療機関に入院したところ、十六日に結核の感染が判明し、一関保健所に届け出た。翌十七日に急性心臓死した。


 その後、九十歳代の男性が三月三十日に感染したことが判明し、四月四日に肺炎で死亡した。八十歳代の女性は同十五日に感染が分かり、現在は入院中。九十歳代の女性は同二十一日に判明し、二十三日に急性肺炎で死亡した。


【詳しくは岩手日報本紙をご覧下さい】


(2009/05/02)

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20090502_2


 日本の結核罹患率は次第に低下してきた。その中で、高齢者と看護・介護職の結核対策が問題となっている。(財)結核予防会結核研究所最新の話題TOPにあるわが国の結核疫学の特徴に次のような記載がある。

(1)高齢者で高い罹患率
 わが国の新登録者(26,384人:2006年)の47.0%、12,389人は70歳以上の高齢者で占められている。60歳以上で見れば61.5%の16,226人である。高齢者はいろいろな基礎疾患を持ち、これらの症状がある上に、結核の症状は比較的軽微なことが多く、しばしば診断が困難である。


(中略)


 また、結核の院内感染、とりわけ看護職の結核も憂慮に堪えない問題である。罹患率は一般女性に比して4.3倍も高く、しかも最近、年々高くなっている。先進国にあるまじき問題である。緊急に解決が望まれる。


 本論文では、他に、若者、ホームレスや無職の人々、外国人、HIV感染者の結核にも注意を喚起している。社会的弱者に対する保健サービスが不十分な状態では、結核根絶は困難であることを強調している。
 今回の特養での集団感染は、要介護高齢者だけでなく、ケアを提供する看護・介護職に対しても結核対策が急務であることを示した。高齢社会の本格化や貧困問題の深刻化を考えると、結核は過去の病気ではなく、総合的対策が必要な今日的な疾患であるといえる。