自動車減産の中、トヨタ子会社の新工場建設が進む

 トヨタ自動車子会社の新工場建設が宮城県で予定どおり進められている。

セントラル自動車移転:大衡村で安全祈願祭 投資額は圧縮 /宮城


 トヨタ自動車の生産子会社「セントラル自動車」(神奈川県相模原市)は22日、本社・工場の移転先として取得した大衡村の第二仙台北部中核工業団地内で、建設工事の安全祈願祭を行った。同社は投資総額を約488億円としてきたが、自動車販売の低迷などを受けて40億〜50億円程度圧縮し、さらに削減を目指すことを表明。一方、建築許可が下り次第着工し、10年10月の工場稼働時期には変更がないとした。


 セ社やトヨタ関連企業、大和町で新工場建設中のハイブリッド車向け充電池メーカー「パナソニックEVエナジー」などの代表者約40人が出席。セ社の石井完治社長や村井嘉浩知事らが、くわ入れなどを行った。


 新工場では、最終的には年産約12万台を目指すという。セ社は「『小さく生んで大きく育てる』ことを考えている」としている。


 村井知事は祈願祭後に県庁で行われた会見で「セ社進出で、雇用や税収に必ずプラスが生じる。今後は神奈川から移ってくる従業員や家族のサポートにも力を入れていきたい」と説明。景気変動への対応に関し「県として自動車産業を応援する方法がないか検討を進めている。環境に優しい車を公用車に採用するとか、県民に購入をお願いするなどの対応を考えていきたい」と述べた。【青木純】


毎日新聞 2008年12月23日 地方版

http://mainichi.jp/area/miyagi/news/20081223ddlk04020163000c.html


 セントラル自動車の施設は、老朽化しており、いずれ建替えが必要だった。工場移転であり、生産能力増強ではないため、起工にこぎ着けたということになる。しかし、自動車業界をめぐる状況は悪化の一途をたどっている。

トヨタ、2-4月国内生産台数、半減の見込み
2009年01月17日 16:52更新


 トヨタ自動車は世界不況のために景気が悪化し新車販売が激減しているため、2-4月の国内の生産台数を前年同期比40%-50%減にする見通しだ。稼働日1日当たりの生産台数を、9,000-10,000台前後に減らすと見られている。この台数は、効率的に生産できるぎりぎりの規模11,000台を下回る。収益確保が難しくなるため、生産ラインの継続的な停止など、国内の生産体制を抜本的に見直す検討に入った。


 トヨタは昨年末、09年3月期の連結営業損益予想を初の赤字に下方修正したが、赤字幅の拡大や非正規従業員の追加削減につながる公算が大きい。金融機関はトヨタの系列企業には、これまで積極的に融資してきたが、大幅な減産を受けて貸し出しを渋る動きもある。資金繰りが悪化する可能性もあり、トヨタグループの主要企業は、下請けに対し、当面の資金調達計画を調査している。現状では世界自動車市場の状況悪化は予測できないでいる。トヨタは16日、北米の自動車組み立て全7工場で1-3月、生産ラインを最大30日間操業停止にすると発表。

http://jp.ibtimes.com/article/biznews/090117/27224.html


 宮城県の村井知事は富県戦略をスローガンに、トヨタ子会社誘致で優遇策をとった。http://www.pref.miyagi.jp/zeimu/shinzei/jissi-ni-tuite.htmという制度を設け、地元企業から税金をとりたて、企業立地奨励金の財源を捻出した。新工場を建設する必要があるのなら、少しでもメリットがあるところに移転したいという企業からすると、渡りに舟だった。
 しかし、自動車業界をめぐる状況は一変している。今後、生産規模の縮小は避けられない。従業員転居に伴い、地元経済は多少潤うかもしれない。だが、実際に工場が稼働し始めても、地元住民が期待する新たな雇用は創出されないと予測する。大企業誘致にかかった費用に見合う効果があったのかどうか、検証が求められる。