介護報酬改定 通所系(当面のまとめ)
通所系サービスには、1)要介護者の閉じこもり予防と社会的交流促進、2)家族の介護負担を減少する(レスパイトケア)、3)リハビリテーションサービスの提供、4)医学的管理、などの機能がある。このうち、通所リハビリテーション特有の機能として、リハビリテーションサービスの提供がある。しかし、通所リハビリテーションの施設基準は、理学療法士等の配置は常勤換算で0.2人以上という低水準にとどまっていた。
今回の介護報酬改定の結果、リハビリテーションサービス提供機能に着目すると、通所系サービスは次の4種類に大別されることになった。
上記中、重度要介護者を対象とした療養通所介護以外について、言及する。
【関連エントリー】
- 日本リハビリテーション病院・施設協会の介護報酬改定要望事項(2008年10月6日)
- 通所リハビリテーションの要件変更(2008年12月13日)
- 介護報酬改定 通所リハビリテーション2009年1月4日)
- 介護報酬改定 介護予防型通所リハビリテーション(2009年1月4日)
- 介護報酬改定 通所介護(2009年1月4日)
# 通所サービス(リハビリテーション専門職未配置および非常勤型)
指定リハビリテーション事業所が診療所である場合の人員基準が次のとおりになった。
診療所の通所リハビリテーションにおいては、療法士の常勤換算基準が緩和された。場合によって、療法士の非常勤配置も不要となった。医師要件以外、通所介護との差を認めなくなった。
# 通所サービス(リハビリテーション専門職常勤型)
診療所以外(老健、病院)では、人員基準は次のように改正された。
常勤配置換算で、利用者100人に1人となると、定員20人のコースに1人の療法士が必要となる。これまでの常勤換算0.2人と比べると、配置基準が強化された。これまで、療法士を少なめに配置していた事業所は常勤配置を義務づけられることになった。
なお、今回の介護報酬改定では、通所リハビリテーションにおける短期集中リハビリテーション加算が3月以内に限定された。3月超の場合には、個別リハビリテーション加算となり、80単位/日と低報酬になっただけでなく、月13回という制限が加わった。この月13回という制限は、診療報酬における疾患別リハビリテーション料標準的算定日数超に適応される月13単位までという制限に呼応する。
なお、通所介護で個別機能訓練加算(II)(+42単位/日)を算定するためには、指定通所介護を行う時間帯を通じて、専ら機能訓練指導員の職務に従事する理学療法士等を1名以上配置することが必要となる。非常勤型の診療所通所リハビリテーションより、リハビリテーション専門職が手厚くなる場合も想定される。
# 短時間型通所リハビリテーション
短時間型通所リハビリテーションの導入は、今後リハビリテーション全般に対し甚大な影響を及ぼすことになる重大な改定である。
資料1−2 平成21年度介護報酬改定の概要 全体版(PDF:654KB)(以下 「概要」)内に次のような文章がある。
リハビリテーションの利用者が、医療保険から介護保険に移行しても、ニーズに沿ったサービスを継ぎ目なく一貫して受けることができるよう、短時間・個別のリハビリテーションについての評価を行うとともに、リハビリテーションの実施者について医療保険との整合性を図る。また、理学療法士等を手厚く配置している事業所を評価する。さらに、医療保険において、脳血管等疾患リハビリテーション又は運動器疾患リハビリテーショ ンを算定している病院・診療所については、介護保険の通所リハビリテーションを行えるよう「みなし指定」を行う。
整形外科を標榜している診療所などが、短時間型通所リハビリテーションに進出するのではないかと予測する。次のような形態が例として考えられる。
例)運動器疾患等リハビリテーション料I、脳血管疾患等リハビリテーション料III算定。理学療法士2名勤務。
- 午後、1時間以上2時間未満通所リハビリテーションを2回実施(午前は医療保険でのリハビリテーションを実施)。
- 利用者/回は4〜5名。
- 理学療法士1名が個別リハビリテーションを行っている間、もう1名が集団でのサービスを実施。
- 利用者が全て要介護1と仮定すると、介護報酬は1名あたり270単位+各種加算となる。理学療法士1名あたりにすると、135単位+各種加算となる。運動器リハビリテーション料I170点と比べると低額だが、脳血管疾患等リハビリテーション料IIIと比べると高額。
これまで通所リハビリテーションを運営していた場合、短時間型通所リハビリテーションに特化するという形態も予想される。曜日ごとに長時間型と短時間型を組み合わせることができるかどうかも気にかかる。
介護予防型通所リハビリテーションでは、月あたり定額制となっている。定額報酬範囲での利用を考えると、短時間型の通所リハビリテーションの方が、報酬が低い分頻回に利用できる。短時間型通所リハビリテーション利用者の主流が、要支援1及び2になる可能性がある。
短時間型通所リハビリテーションが普及することにより、これまでの通所サービス利用に拒否的だった層にとって選択肢が広がった。一方、介護保険では、要介護度ごとに区分限度額があり、利用に制限がかかる。また、介護保険充実を口実として、医療保険における疾患別リハビリテーション料標準的算定日数上限超の制限が強化される恐れがある。
具体的な要件が今後明らかにされてくる。通所系サービスに関する施設基準にどのような変更がなされるか注目したい。