「脳卒中難民」の悲劇

 週刊文春38〜41ページに、「後期高齢者医療」にも「介護保険」にも見捨てられる「脳卒中難民」の悲劇、というルポ(塩田芳享氏)が載った。
 次のような章立てとなっている。

  • リハビリ病棟の成果主義
  • 保険から排除される患者たち
  • 療養通所事業所の供給不足
  • 実は介護保険は余っている


 前半部分は、当ブログにもしばしばコメントをいただいている澤田石順先生(鶴巻温泉病院)への取材が中心である。次のような話題が提供されている。

 「重症の患者さんたちは本当に行き場がなくなってしまった。さらに、それがすべての世代に適用されたため、社会復帰のためにも長期リハビリが必要な若くて重症な脳卒中患者さんたちが困っているのです。」

 「国のやり方は、脳卒中の患者さんたちに、リハビリをあきらめろと言っているのと同じことです。」


 後半部分は、「医療保険」でリハビリテーションを受けられなくなった脳卒中患者の受け皿と想定されている「介護保険」の実態である。
 片野一之氏(うしおだ介護支援センター)は次のように発言する。

 「2006年から、私たちは”三重減”と呼んでいるのですが、『要介護認定者』が減り、『利用者』が減り、そして『給付額』が減った。そのために当然、『介護スタッフ』も減った。このような悪循環から、サービスを受けたくても受けられない人がどんどん増えているのです。」


 介護予防給付導入により、「要支援1」、「要支援2」が増えている一方、「要介護1」以上の認定者が抑制されている。区分限度額上限で「給付額」が抑えられているため、介護保険総支給額自然増が頭打ちとなっている。
 さらに、「療養通所事業所」自体が不採算構造となっていることが示された後、次の事実が明らかになる。山井和則民主党衆議院議員は、次のような指摘をする。

 「詳しく調べてみると、確かに平成18年度だけでも実に1,400億円もの余剰金があることがわかりました。
 介護保険の予算がこんなに余ってしまったのは、厚生労働省があまりにも介護報酬を引き下げ、蛇口を閉めすぎたからです。」


 前半部分は、当ブログでも繰り返し主張してきた内容である。一方、後半部分に関しては、私自身掘り下げがまだ不十分と考えている。しかし、介護保険の”三重減”という表現は言い得て妙である。また、介護保険財源が余っているという衝撃的な事実が明らかになった以上、いかに介護現場に還元するのか具体的対策が求められる。
 来年度の介護報酬改定と要介護認定方式の変更がある。介護報酬を約3%増やすことは決まっているが、実態はまだ不透明である。介護報酬改定の概要が明らかになった時点で、当ブログで細かく分析することにする。