高齢者向け食品・食材市場は今後急拡大が見込まれる

 日経プレスリリース(2008年10月21日)、富士経済、高齢者向け食品・食材や介護食品の市場調査結果を発表より。

富士経済、高齢者向け食品・食材や介護食品の市場調査結果を発表
高齢者向け食品・食材、宅配・配食サービス市場の調査を実施


2008年の市場
☆ 高齢者施設向け食材市場、病者・介護食市場、宅配・配食サービス市場の合計は1兆5,902億円(前年比1.5%増)の見込み
☆ 介護食市場は、ソフト・ムース食、水分・栄養補給型食が拡大し、前年比18.2%増の127億円の見込み


 総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 阿部 界03−3664−5811)は、すでに高齢社会となっている日本の高齢者向け食品の小売、卸、施設(病院、高齢者福祉施設等)、給食、宅配における動向と食材及び介護食品市場について調査を実施した。その結果を調査報告書「シルバーフード・フードサービスの徹底解明」にまとめた。2年前の2006年に「シルバー&シニアフードチャネルの徹底解明」として調査結果をまとめているが、今回の調査では、小売・宅配・施設ルートの流通に加え食材及び介護食品にまで対象を拡大し、分析を行った。


 プレスリリース内容をまとめてみた。

  • 高齢者施設向け食材市場 2008年見込み 1兆4,018億円(前年比 101.0%)
    • 病院: 給食の外部委託、院外調理の増加、病床数の減少などにより病院・診療所向け市場は減少推移。
    • 介護老人福祉施設: 施設数は年々増加傾向にあり、65歳以上の高齢者の増加とともに増加が続くとみられる。
    • 有料老人ホーム: 施設数の急速な増加に加え、介護と食事内容が施設選択の重要ポイントであるため食費の設定が他の施設より高くなっており、大きく増加している。
    • 高齢者専用賃貸住宅: 食事サービス付き施設が年々増加しており、何らかの食事サービス需要があるため、配食・給食サービス業者にとっては有料老人ホームとともに有望チャネルとなっている。
  • 病者・介護食市場 2008年見込み 1,030億円(前年比 107.6%)
    • 流動食: 市場の50%近くを占める。小量サイズの使用拡大など需要層の拡大が見込まれる。
    • 介護食: キザミ・ミキサー食、ソフト・ムース食、水分・栄養補給、菓子・デザートからなり、特にソフト・ムース食が施設での利用を中心に増加している。容量が少なく、咀嚼・嚥下に配慮してあり、栄養素を添加している高齢者専用の菓子・デザートが増加している。2008年の介護食市場は前年比18.2%増の127億円と見込まれる。
    • とろみ調整剤・ゲル化剤: 施設に加えて在宅需要の拡大が見込まれており、無味・無臭や粘性の安定化、さらに温度帯を限定しないとろみ付けなど品質強化が進んでいる。ゲル化機能についても様々な商品開発が進んでいる。
  • 宅配・配食サービス市場 2008年見込み 854億円(前年比 103.5%)
    • 食材宅配: 前期高齢者の利用者が多い。ヘルシータイプでは、1人分からのコース設定となっていることが多いが、コースの主流がファミリー向けということもあり、2人分からが多い。
    • 完成食宅配: 1人分からの注文が可能であり、高齢者にとって調理の必要が無く、栄養のバランスがとれている完成食宅配の潜在的需要は大きいと考えられる。低価格化は重要な要素となる。


 詳しくは、資料「シルバーフード・フードサービスの徹底解明」 A4判 287頁 価格:130,000円(税込み136,500円)参照。


 高齢者向け食品・食材市場は今後急拡大が見込まれる。特に配食サービスに注目したい。
 独居高齢者に対しては、低価格の完成食の配食が要望されている。有料老人ホームや高齢者専用賃貸住宅へは調理済食品を届け、施設内厨房での作業を再加熱などの簡易調理にとどめる。在宅と施設、両者への配食サービスを有機的につなげることにより、コストダウンを図ることができる。
 嚥下障害者の介護にあたっては、既製の介護食を上手に利用し、その分摂食介助に時間を当てた方が効率的である。介護食も種類が多彩となってきており、選択肢が増えている。配食サービスのメニューに当然介護食も入ることになる。
 配食サービス事業者や介護食を開発している企業にとって、高齢社会本格化はビジネスチャンスとなっている。