転倒・骨折事故と脳梗塞との因果関係は果たしてあるのか?

 リハビリテーション関係者からみて、了解不能な見出しがつけられている。


 毎日新聞医療訴訟:患者とさぬき市和解 病院でリハビリ中脳こうそく /香川より。

医療訴訟:患者とさぬき市和解 病院でリハビリ中脳こうそく /香川


 02年、さぬき市寒川町石田東の大川総合病院(現在のさぬき市民病院)でリハビリ中の事故で骨折、その後手術ではなくリハビリを続けられ脳こうそくを発症したのは同病院の注意義務違反があるなどとして、同市内の男性(74)が同病院を運営する同市に対し、約5500万円の損害賠償を求め高松地裁に提訴した裁判で、同市と男性が今月4日、市が男性側に850万円を支払うことで和解した。


 訴状などによると、男性は02年2月、同病院で機能回復訓練中に転倒、左大たい骨を骨折した。病院側はミスを認めたが、手術ではなくリハビリによる治療を選択。男性の症状は治らず、03年5月に他の病院で手術を受け症状は改善したが、その後脳こうそくで寝たきりとなり現在に至っている。


 高松地裁(森実将人裁判長)は和解金850万円の和解案を提示し、両者が受諾した。


 病院側は「転倒事故は、予測しがたい状況下だったが、安全配慮義務違反があり、重く受け止めている。今後安全に十分配慮したい」とコメントした。【吉田卓矢】


毎日新聞 2008年11月8日 地方版


 機能訓練を行っていたことを考慮すると、もともと何らかの原因で運動障害があったのだろう。大腿骨骨折前のADLが低い場合には、手術を回避することもある。転位が少ない時には、全身状態も考え保存的治療を選択することもある。骨折後すぐに手術をしなくても、必ずしも責められる訳ではない。
 最終的に脳梗塞を起こして寝たきりになったから提訴したというニュアンスの記事である。しかし、病院側のコメントをみる限り、転倒事故に対して安全配慮義務違反があることを認め和解したとなっている。骨折受傷から他病院での手術まで1年3ヶ月あり、その後に脳梗塞を発症した。骨折と脳梗塞とは無関係だったとしか考えられない。
 結果が悪ければ医療側が責任をとるのが当たり前というスタンスでこの新聞社は記事を書く。骨折と脳梗塞との間には通常因果関係はない。「病院でリハビリ中脳こうそく」という見出しと内容の整合性がとれていない。医療に関し無知な記者が、ご家族への取材だけをもとに書いたと推測する。最終的な結果が悪ければ医療機関を責めても良いという、短絡した発想が根本にある。このようなレベルの記事を目にするたびに、寂寥感がこみあげる。