バラク・オバマ氏の勝利演説

 バラク・オバマ氏が米大統領に当選した。


 バラク・オバマ氏の勝利演説*1*2が注目を集めている。特に、国民の融和を訴える次の一節は繰り返しテレビで放映され、強い印象を与えている。

老いも若きも、金持ちも貧乏人も、そろって答えました。民主党員も共和党員も、黒人も白人も、ヒスパニックもアジア人もアメリカ先住民も、ゲイもストレートも、障害者も障害のない人たちも。アメリカ人はみんなして、答えを出しました。アメリカは今夜、世界中にメッセージを発したのです。私たちはただ単に個人がバラバラに集まっている国だったこともなければ、単なる赤い州青い州の集まりだったこともないと。私たちは今までずっと、そしてこれから先もずっと、すべての州が一致団結したアメリカ合衆国(United States of America)だったのです。


 リンカーンによる奴隷解放キング牧師公民権運動といった大きな歴史の流れの中に、オバマ氏の大統領当選は位置づけられる。しかし、オバマ氏の演説に熱狂する支持者の姿をみると、アフリカ系米国人の代表という域を超えている。
 泥沼化するイラクアフガニスタンでの戦争、100年に一度の金融危機、地球の温暖化など、ブッシュ政権負の遺産が山積みにされている。中でも、市場原理主義のもと、富める者とそうでない者との格差が拡大した。分断され孤立した国民の統合の象徴として、オバマ氏が位置づけられている。

私たちの前には、長い道のりが待ち受けています。目の前の斜面は急です。目指すところに、1年ではたどりつかないかもしれない。大統領として1期を丸ごと使っても無理かもしれない。しかしアメリカよ、私たちは絶対にたどり着きます。今夜ほどその期待を強くしたことはありません。


みなさんに約束します。私たちは、ひとつの国民として、必ずたどり着きます。


これから先、挫折もあればフライングもあるでしょう。私がこれから大統領として下す全ての決定やすべての政策に賛成できない人は、たくさんいるでしょう。そして政府がすべての問題を解決できるわけではないと、私たちは承知しています。


けれども私たちがどういう挑戦に直面しているのか、私はいつも必ずみなさんに正直に話します。私は必ず、皆さんの声に耳を傾けます。意見が食い違うときは、特にじっくりと。そして何よりも私は皆さんに、この国の再建に参加するようお願いします。国を建て直すとき、アメリカでは過去221年間、いつも必ず同じようにやってきた。ささくれたタコだらけの手で、ブロックを一枚一枚積み上げ、レンガを一枚一枚積み上げてきたのです。

今回の金融危機から得たほかでもない教訓というのは、メーン・ストリート(普通の町の中央通り)が苦しんでいるのにウォール・ストリートだけ栄えるなど、そんなことがあってはならないということ。それを忘れずにいましょう。


 オバマ氏の言葉の力に、米国の底力を見る。アメリカ合衆国の再生が始まろうとしている。