社会保障国民会議より、医療・介護費用のシミュレーション結果が公表された(2008年10月23日)。共同通信、消費税率4%引き上げ必要 社会保障国民会議が試算より。
政府の社会保障国民会議は23日の医療・介護・福祉分科会で、高齢化がピークを迎える2025年時点の医療・介護費用は現在の41兆円から大幅に増加し、91兆−94兆円となるとの試算を公表した。自己負担を除く財源は保険料収入が41兆−42兆円で、公費が39兆−40兆円。公費のうち14兆−15兆円は新たな財源措置が必要で、消費税で賄うと税率を4%引き上げなければならない。これに加え、試算では示されていないが、医療や介護の保険料率引き上げも避けられない。
医療・介護サービスを充実させる「改革シナリオ」に基づく試算。救急や手術など集中的な治療が必要な急性期医療に医師や看護師らを手厚く配置し、ヘルパーら介護職員を現在の約117万人から2倍以上に増やすなど費用が膨らむ前提で初めて計算した。
将来の給付と負担の姿を国民に示し、消費税を含め社会保障の在り方をめぐる議論を促す狙い。政府、与党の具体的な取り組みも求められる。
新たに必要となる保険料収入は12兆−13兆円。内閣官房によると、中小企業の従業員らが加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)の医療保険料が現在の8・2%から1・2倍の10%程度にアップ、65歳以上の介護保険料は全国平均で月額4090円から2倍程度の約8000円に上がるという。
2008/10/23 20:30 【共同通信】
団塊の世代の高齢化が本格化する中で、医療や介護のマンパワー増は必須となっている。医療・介護費用のシミュレーション(本体資料)[PDF] の29ページをみると、現在のサービス提供体制を前提としたシミュレーションA(現状投影シナリオ)でも、医療職・介護職は、2007年度の合計385万人から、2025年度には551.1〜563.8万人に増加する。シミュレーションB(改革シナリオ)では、627.8〜684.4万人となる。
権丈氏は、積極的社会保障政策という景気対策――社会保障重視派こそが一番の成長重視派に決まってるだろうということを述べている。大村昭人氏は、医療立国論と言う著書で「医療は確実な成長産業、経済活性化の鍵」と主張している。医療や介護などの社会保障が内需を刺激し、そのことが経済成長につながるという考え方である。医療や介護分野で新たな雇用が200〜300万人分も確保されることをみると、両氏の主張もうなずける。
しかし、マスコミ報道をみると、社会保障国民会議のシミュレーション結果を見て、消費税引き上げが必要、社会保険料が増える、というマイナスイメージばかりが強調されている。厚労省や財界が主張する医療費亡国論の影響が根強いと言わざるをえない。
社会保障国民会議の資料をみると、興味深い内容のものが満載されている。例えば、医療・介護費用のシミュレーション(本体資料)[PDF] の20ページをみると、入院・介護施設の合計は、シミュレーションA(現状投影シナリオ)では、2007年度の186万人/日から309万人/日へと増大する。長期療養(医療療養)は、22万人/日から36万人/日へと増加する。厚労省の療養病床削減方針と対立する結果が出されている。
小泉構造改革路線による社会保障費削減路線の中で、医療も介護も崩壊しつつある。医療や介護に関する費用をこれ以上削減することは不可能であり、逆に大幅な財源確保こそが必要であることを社会保障国民会議は主張している。