通所サービスで窒息、緊急対応の遅れで提訴される

 昨日に引き続き、介護事故について。神戸新聞デイサービスで窒息 男性が医療法人提訴へ 神戸より。

デイサービスで窒息 男性が医療法人提訴へ 神戸 


 デイケアサービスの利用中に食事がのどにつまり障害が残ったのは、職員が安全保護義務を怠ったためとして、神戸市東灘区の男性(77)と妻(75)が、同市灘区の医療法人康雄会を相手に、慰謝料など約六千万円の損害賠償を求める訴訟を、近く神戸地裁に起こす。
 代理人によると、男性は、同法人が経営する同市東灘区の介護老人保健施設を利用。今年六月、デイケアサービスの一環として、約三十人の利用者とともに回転ずし店で食事をしていたが、イカのにぎりずしが誤って気管に入った。
 付き添っていた施設の職員が、異物除去の措置をとったが、男性に意識があったため、すぐに救急通報はしなかった。ところが約十分後に男性の心肺が停止。その十分後に駆け付けた救急隊員が気道を確保し、男性は心拍再開したが、低酸素性脳症で機能障害が生じ、現在も寝たきりの状態となっている。
 代理人らは「介護従事者として、早期に窒息を発見し、即座に救急通報するのは当然の義務。六人の職員が付き添いながら、呼吸の有無の確認を怠り、通報をせずに異物除去の作業を続けたことは重大な過失にあたる」と主張している。
(10/18 10:20)


 食事会で外出し回転ずしを食べている最中に事故は起こった。通所サービスを利用しているような高齢要介護者の場合、嚥下機能は正常だったのかどうかということが問題になる。窒息を起こしたのは、すしネタの中でも、咀嚼が困難なイカである。店の従業員とも相談し、食べにくいネタはあらかじめ提供しないという準備も必要だったのではないか。
 今回、訴訟となった理由は、窒息事故を起こしたことではない。緊急時の対応の遅れ、すぐに救急車を呼ばなかったことを非難されている。事故が起こってから救急隊到着まで20分かかっている。心配停止までの10分間の間にバイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸数、酸素飽和度)がとられているかどうか不明である。老健施設の通所であり、看護職かリハ専門職がついていたと推測するが、記事では詳しくは触れられていない。


 先日のエントリー、福岡市の高齢者施設、介護事故での死亡率35.4%でも触れたが、介護事故の中で誤嚥・誤飲は少なくない比率を占めている。食事中の誤嚥・窒息対策は死亡事故につながる重大事故である。介護施設において最も対策を強化する必要がある課題である。