「介護保険におけるPT・OT・STによる訪問サービスの現状分析と提言」

 全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会事務局より、10月吉日付で、「介護保険におけるPT・OT・STによる訪問サービスの現状分析と提言(平成20年9月12日) 日本リハビリテーション病院・施設協会 全国訪問リハビリテーション研究会」という冊子が送付されてきた。今後、訪問リハビリテーション問題を考える上で基礎的資料になるものである。提言の部分を引用する。

 提言


1.PT・OT・STによる訪問サービスを実施する「病院」「診療所」「老人保健施設」「訪問看護ステーション」は、いずれも「訪問リハビリステーション」と標榜し、PT・OT・STによる訪問サービスの提供拠点であることを地域に対して明示する必要がある。


2.訪問リハビリテーション訪問看護7の仕組みを統一し、分かりやすくすることが必要である。


3.在宅主治医から訪問リハビリテーション提供側へ「訪問リハビリテーション指示書」、提供側から在宅主治医に対して「訪問リハビリテーション実施計画書」および「訪問リハビリテーション実施報告書」の提出を義務づけるべきである。


4.上記に加え、単独型訪問リハビリステーションの創設も検討する必要がある。


5.短期集中型訪問リハが迅速に実施可能な体制整備を目的として訪問看護と同様に医療保険において2週間を限度とした訪問リハ特別指示書の制度を新設することを検討すべきである。


6.PT・OT・STによる訪問に関する教育研修体制の強化が必要である。


 日本リハビリテーション病院・施設協会、全国訪問リハビリテーション研究会は、当面の対策として、「病院」「診療所」「老人保健施設」「訪問看護ステーション」に「併設」するような形で、「訪問リハビリステーション」設置を進める案を出している。本文43ページをみると、人員基準は、「PT・OT・STのいずれか1名を常勤専従で他の業務と兼務しない訪問リハの責任者として配置すること。」となっている。参入障壁は低く、標榜可能な事業所は増加すると予測する。
 最大の眼目は、訪問看護ステーションを参考にして、分かりやすい仕組みを作ろうとしている点である。基準(案)42〜45ページでは、原則として、報酬は1リハ単位(20分)300単位とし、週6単位を上限(訪問リハ特別指示書では1週24単位上限)という形で統一する。書類も訪問看護と同様の書式にする。併設型訪問リハビリステーションが増加した段階で、管理者を専従・常勤のPT・OT・STから出す単独型訪問リハビリステーションを創設する、という戦略を立てている。


 一読して、実現性の高いプランと判断した。最大の懸念は介護報酬の設定である。現在、最も報酬が高い訪問看護7(30〜1時間)830単位と比べると、3リハ単位(60分)行った場合は、訪問リハビリステーションの報酬は900単位となり上回る。介護保険の訪問リハビリテーション(短期加算なし)500単位と比べると大幅な増加となる。介護報酬が連続して引き下げられてきた経緯を考慮すると、訪問看護と同水準(1リハ単位あたり280単位)程度ではないかと推測する。