後期高齢者医療制度抜本的見直し、茶番劇に終わる

 麻生太郎氏が、総理大臣に指名され、舛添要一厚労相が再任された。舛添氏は、これで3代の首相に仕えることになった。福田前首相の下で2回の内閣改造が行われたので、連続して4回、厚労相に選ばれたことになる。ただし、最初に選ばれたのが安倍改造内閣だったため、在任期間はまだ1年1ヶ月に過ぎない。


 自民党総裁選挙中に舛添厚労相がぶちあげた後期高齢者医療制度の抜本的見直しが、茶番劇に終わった。時事、「全面見直し」あいまいに=後期医療で与党迷走より。

「全面見直し」あいまいに=後期医療で与党迷走


 麻生太郎新首相は、75歳以上の後期高齢者医療制度長寿医療制度)の見直しを政権の課題に掲げた。高齢者の反発を踏まえ、衆院選前に改革をアピールする狙いがあるとみられる。ただ、自民党総裁選期間中に掲げていた「全面見直し」の方針は、新総裁選出後の自民、公明両党の連立政権合意ではあいまいに。一部修正にとどまる可能性もあり、迷走ぶりに対し野党が今後追及を強めるのは必至だ。
 後期高齢者医療制度の見直しをめぐっては、舛添要一厚生労働相が20日、「この家(同制度)は嫌だという声が大きいから、新しい家を造る」として、年齢で区分けしないことなどを原則に、新制度を創設する考えを表明。麻生氏も翌21日、「全面的に見直すべきだ」と明言した。75歳での線引きは同制度の根幹で、年齢で区分しないのは事実上、制度廃止を意味する。
 しかし、突然打ち上げられた方針転換に、制度定着に腐心してきた公明党や厚労族議員は激怒。「連立政権合意で見直しに触れざるを得ないが、『抜本的に』などとするのは無理だ」(厚労相経験者)とのろしを上げた。結局、23日にまとめられた連立政権合意では「法律に規定してある5年後見直しを前倒しして、より良い制度に改善する」と記述。現行制度維持もにじませた言い回しとなった。
 舛添氏の発言について、公明党山口那津男政調会長は、舛添氏からの説明として「75歳以上のサラリーマンが同制度に移行せず、健康保険組合への加入を続けるのを容認する」趣旨だったと解説。「年齢区分を廃止するという大げさな考え方では必ずしもないと理解した」と強調する。
 与党内の足並みの乱れは、後期高齢者医療制度の廃止法案を国会提出している野党に、格好の攻撃材料を与えた形。きっかけをつくった舛添氏に対する批判の声がくすぶる中、与党は「具体的な議論は衆院選が終わってからだ」(厚労相経験者)として、見直し方針を看板に総選挙を乗り切る考えだ。(了)


(2008/09/24-18:20)


 舛添厚労相再任に関しては私は歓迎したい。歴代の厚労相の中ではまともな仕事をしている。中でも、医師養成数増加に道をつけたことは最大の功績である。しかし、今回の後期高齢者医療制度の抜本的見直しは、舛添厚労相のパフォーマンスと捉えられ、見事な失敗に終わった。新内閣の中で、同氏の立場は微妙なものになった。
 一連の騒動を通じ、後期高齢者医療制度を強固に擁護している一派があることが明らかになった。この勢力の機嫌を損ねたために、福田前首相は退陣せざるをえなくなったとも言われている。後期高齢者医療制度抜本的見直しは自民党政治家にとってはタブーとなった感がある。
 早ければ、10月26日に総選挙が行われる。賞味期限が切れる前に解散を行おうとしているが、自民党総裁選挙自体醒めた目で見られていたことに自民党は気づいているのだろうか。さらに、いわゆる10・15ショックも待ちかまえている。10月15日に行われる医療保険年金天引きの対象者は約600万人増え、計1500万人となる。これまで猶予されていた被用者保険の扶養家族、65〜74歳の国保加入者などからの天引きが始まる。今年4月に行われた山口2区補選と同じ現象が全国中で起こる。
 後期高齢者医療制度固執する限り、与党は自滅の道をたどることになる。そのことに気づいているのは、与党の中では舛添厚労相くらいしかいないようだ。