ブレンダン・ハンセンとスポーツマンシップ

 北京オリンピックで様々なドラマが生まれています。
 学生時代までは、オリンピックなどビッグイベントになるとTVにかぶりついていましたが、医師になって以降、多忙のためライブでビッグイベントを観戦する機会が極度に減ってしまいました。今回のオリンピックは、時差なしで行われているので条件は良いはずなのですが、放映権の問題なのかアメリカのゴールデンタイムにあわせ日中に決勝が行われていることが多いようです。おかげで肝心の場面を見逃し、なかなか話題についていけません。幸いなことに、前半のハイライト北島康介の連続2冠達成の瞬間だけは、ちょうど回診中に患者さんがつけていたTVで観戦できました。


 北島康介とライバル関係にあるブレンダン・ハンセンスポーツマンシップの素晴らしさを示しています。ロイター、五輪=男子平泳ぎハンセン「もう一度世界記録を出すまで続ける」より。

五輪=男子平泳ぎハンセン「もう一度世界記録を出すまで続ける」
2008年 08月 11日 19:57 JST


 [北京 11日 ロイター] 北京五輪の男子100メートル平泳ぎ決勝で4位となり、メダルを逃したブレンダン・ハンセン(米国)は11日、「もう一度世界記録を出すまで続ける」と述べ、五輪後に引退する意思はないことを明らかにした。


 同種目を58秒台で泳ぎ、ハンセンの持つ世界記録を更新して2連覇した北島康介にとってハンセンは宿命のライバル。4年前のアテネ五輪では100メートル、200メートルともにハンセンを退け優勝したが、その後の国際大会では敗退続き。それだけに大会前の会見で北島は「五輪は全く違うもの。彼との勝負が今から楽しみ」と闘志を燃やしていた。


 ただ、ハンセンは9日の予選で10位と出遅れ、10日の準決勝も59秒94で5位。記録と順位が伸びないことを「決勝までは全力を出さないと決めていたから問題はない」と強がっていたが、決勝も前半こを2位で折り返したものの後半に失速。


 ハンセンは「メダルを取るには最高のパフォーマンスが求められていた。メダリストの3人はそれができていた」とこの日のレースを振り返った。「僕は今年は本当に不調なんだ。この重要な年にね」と正直に語るハンセン。「でも僕を見るのはこれが最後じゃないよ。もう一度世界記録を出すまで続けると決めているから」とし、世界記録への再挑戦に意欲を示した。


 北島の優勝については「驚いていない。彼は本当に速かった」とコメント。北島にも「すばらしい泳ぎだった」と伝えたという。「さも簡単なことのように世界記録が破られているが、決して簡単なことではない。あんなレースができる男には脱帽するしかない。強烈なプレッシャーがかかったレースなのに本当にすごい泳ぎだった」と賞賛した。


 そして、さらに北島を称えた。「北島は真のチャンピオンだ」。


 (ロイター日本語ニュース 大林優香記者 マーティン・ペティ記者)

 本日、競泳競技は最終日を迎えました。男子400mメドレーリレーで、日本が3位、アメリカが1位となりました。北島康介の3つめのメダルとフェルプスの8冠ばかりが報道されていますが、ブレンダン・ハンセンアメリカチームの一員として、待望の金メダルを獲得しています。レース後、北島康介アメリカチームに近づき、ハンセンらと二言三言挨拶をしていました。お互いを高めあうライバル同士にしか分からない感情が2人の間に流れています。


 絶え間ない努力を重ねただけでなく、プレッシャーに負けない精神力を持ち、かつ、勝利の女神に愛された人間だけが、栄光をつかむことができます。多くの挑戦者は敗者に終わります。報道は、メダルを獲得した日本人選手にどうしても偏りがちです。素晴らしいスポーツマンシップを持ったブレンダン・ハンセン北島康介の引き立て役としてしか紹介されません。ナショナリズムが昂揚しがちな五輪では仕方がないことかもしれません。ただ、私自身は、北島康介ブレンダン・ハンセンのライバル物語に魅かれています。何とか、ハンセンに北島の持つ世界記録を更新させてあげたい、という気持ちになっています。当然、その時に最も喜ぶのは北島選手自身ではないかという気がしています。