リハビリ中の事故多発?

 日本医療機能評価機構、医療事故情報収集等事業、平成19年年報(平成20年8月13日)に関する報道の続報。共同ニュース、リハビリ中の事故多発 「医療機関、予防策を」より。

リハビリ中の事故多発 「医療機関、予防策を」


 日本医療機能評価機構(東京)は13日、高齢者などのリハビリテーション中の事故が、全国約560の医療機関で2004年から07年にかけて計24件発生していたと発表した。機構は「報告以外にも相当数の事故が起きていると思われる。予防可能なケースが多く、各医療機関は危険性の調査をして事故防止策を検討すべきだ」としている。


 厚生労働省によると、リハビリ中の事故についての全国調査はあまり例がない。


 機構のまとめによると、24件のうちリハビリ中の運動に伴う骨折や筋断裂などが19件、やけど4件、原因不明による骨折が1件だった。障害が残った可能性が高いケースも1件あった。


 医療機関からの報告では「目を離したすきに患者がベッドから転落した」「患者の骨が想定以上に弱くなっていた」などが原因に挙げられていた。機構の後信医療事故防止事業部長は「多忙な中で漫然と危険性を見過ごしている医療機関もある」と指摘している。


2008/08/13 17:16 【共同通信


 平成19年年報の147ページから203ページまでに、「専門家部門による個別テーマ検討の現況」に関する記載がある。とりあげられたテーマは次のとおりである。

  • 薬剤に関連した医療事故
  • 医療機器の使用に関連した医療事故
  • 医療処置に関連した医療事故
  • 検査に関連した医療事故
  • 小児患者の療養生活に関連した医療事故
  • リハビリテーションに関連した医療事故


 リハビリテーションに関連した医療事故は、197〜201ページにまとめられている。平成19年度が5件であり、全事故件数1,266件の0.4%となる。平成16年10月から平成18年12月までに起こった19件を加え、24件が分析対象となっている。詳細に検討する。

  • 運動に伴う骨折や筋断裂など19件
    • 訓練中の転倒 11件
    • 訓練中の上肢骨折・脱臼 4件
    • 訓練中の下肢骨折 4件
  • 温熱療法による熱傷4件
  • 原因不明による骨折が1件


 平成19年7月〜12月にヒヤリ・ハット事例収集において報告された事例360例も分析された。

  • 誤嚥・誤飲・窒息 1件
  • 熱傷 4件
  • 患者取り違え 2件
  • 運動による骨折・筋断裂等 241件
  • 義肢・装具 1件
  • 全身状態の悪化 41件
  • その他 70件


 報告書を読んで次のような感想を抱いた。

 まず、リハビリ中の事故多発、という表現は、全事故中0.4%に過ぎないことを考えると適当ではない。障害を残す可能性ありと判断されているのは1例だけである。内容を読んでみても、病棟で生じた場合、ヒヤリハット報告にとどまるだろうと推測されるものまで、事故報告されている。おそらく、リハビリテーション専門職の意識の高まりに伴い、軽度の外傷を生じたものも意識的に事故として報告されているのだろう。
 報告書をみると、事故報告された転倒・転落・衝突は、平成19年度は合計296件(全事故中23.4%)に及ぶ。マンツーマンで訓練を行う関係上、訓練場面での転倒に伴う骨折は少なく、予防も可能である。
 注目すべきは、訓練手技に伴う骨折・脱臼が計8件あることである。報告書を読んでも、乱暴な手技は行っていない。患者自身の骨の脆弱性が関係している。また、温熱療法中の熱傷も、糖尿病などに伴う感覚障害が背景にある。この種の事故予防対策は難しい。