勤務医給与の実態、人事院勧告より

 人事院勧告で、医師給与に関し特別の措置がとられた。朝日新聞国の医師給与11%増 人材確保へ改善策、人事院勧告より。

国の医師給与11%増 人材確保へ改善策、人事院勧告
2008年8月11日


 人事院は11日、08年度の国家公務員の給与について、現行水準で据え置く勧告を内閣と国会に提出した。一方、国の医療機関や刑務所に勤める医師については、人材確保のため、09年度に平均11%引き上げるよう求めた。1日の勤務時間について、1949年から約60年間続く「8時間」を09年度から民間と同水準の「7時間45分」に短縮することも勧告した。


 給与の引き上げ対象は、国立がんセンター(東京都中央区)など8カ所の高度専門医療センターや13カ所のハンセン病療養所に勤める医師らで今年4月現在、1311人。人事院によると、これほど大幅な引き上げ勧告は初めて。04年に独立行政法人国立病院機構」の運営になった146病院の医師は含まない。


 人事院の調査では、国の医師の平均給与は1135万円(46.6歳)で民間病院より23%、国立病院機構より11%低かったため、20〜40代を中心に初任給調整手当を拡充。高度専門医療センターについては、各医師に適用される手当の区分を1段階引き上げ。これにより、国立病院機構と同水準の1261万円に引き上げるよう求めた。


 人事院によると、民間とは10年前ですでに10%程度の給与差があったが、国立病院は施設が充実し、専門的な症例を学べることから必要な医師を確保できた。しかし、近年は医師不足が深刻化。がんセンターの麻酔科医や国立循環器病センター(大阪府吹田市)の集中治療科の医師らが一斉退職するなど、手術に支障が出る事態も起きていた。


 国家公務員全体の年間給与は昨年度、4万2千円(0.7%)の増額勧告で9年ぶりに引き上げられており、据え置きは2年ぶり。今年4月の平均月給が38万7506円(41.1歳)、ボーナスが4.5カ月分で、民間とほぼ同水準だったためだ。ただ、中央省庁の人材確保のため、本省の課長補佐に月給の9.44%、係長に4%、係員に2%の「本府省業務調整手当」を新設する。


 勤務時間短縮については、残業が増えないよう人事院が各省から了解を得ており、人件費は増えない見通しだが、手当が支給されない「サービス残業」の増加につながる可能性もある。


 また、新しい人事評価制度が09年度に導入されるのに合わせ、役職はそのままで給与だけ下げる降給や、等級だけ下げる降格処分を新設する。従来も格下の役職につける降任や分限免職はあったが、処分を多様化することで、能力や実績を反映しやすくする。


 平成20年人事院勧告内の、別紙第1 職員の給与等に関する報告に医師給与に関する資料がある。


(注)1 民間については、平成18年から平成20年までの職種別民間給与実態調査の平均値で、医師のすべての役職段階を対象としている。なお、特別級については、民間病院の特別給の支給割合を用いて求めたものである。
 2 国立病院機構については、平成17年から平成19年までの副院長以下の平均値である。
 3 国については、平成20年国家公務員給与等実態調査による医療職俸給表(一)適用職員の平均値である。


 国立病院で勤務する医師の待遇については、民間病院と比べて劣悪であると言われていた。医師は高収入と思われているが、今回の人事院勧告で勤務医給与の実態が明らかになった。国立病院の場合、40歳半ばで1,100万円台半ばとなっている。責任の重さ、長時間労働という条件を考えると、かなりの低評価である。
 国立がんセンターや循環器病センターといったブランド病院でも医師大量退職が話題となる時代となった。相次ぐ医療費削減は、勤務医待遇のいっそうの低下をもたらしている。コメディカルスタッフの場合はさらに悲惨である。医師をはじめとする医療従事者の労働条件改善は、国立病院だけでなく、自治体病院、民間病院でも待ったなしである。