介護ベッド関連事故予防のため取り組むべきこと

 介護ベッド関連の事故、1年ちょっとで10人が死亡というエントリーに関連した報道があった。朝日新聞介護ベッド事故死10人 経産省、規格の基準作成へより。

介護ベッド事故死10人 経産省、規格の基準作成へ
2008年8月2日14時29分


 介護ベッドの柵(さく)や手すりでお年寄りらが首をはさむなどして、死傷する事故が後を絶たない。昨年5月から16件を数え、死者は10人に上ることが経済産業省の調べで分かった。だが、病院などが介在して実態は把握しにくく、事故はまだ埋もれている恐れがある。経産省は安全性を高めるため、手すりについて日本工業規格(JIS)の基準を定める方針。


 介護ベッドは、療養者の落下を防いだり起き上がりを補助したりするため、周りに柵や手すりが設置できる。だが、柵のすき間に首などを挟む事故が11件、起き上がるときに手すりが動いて転ぶなどした事故が5件起き、10人が死亡、6人が重傷を負った。


 7月8日に鹿児島県内の民間病院からベッドメーカーに連絡があった事故では、昨年12月、患者が柵にあごが引っかかった状態で発見されたという。死者の性別や年齢、7カ月後に連絡してきた理由などは説明がなかった。


 昨年5月に始まった重大製品事故報告制度は、死亡、重傷、火災などの事故の発生を知ったメーカー・輸入事業者に対し、10日以内の国への報告を義務づけた。


 しかし、病院など製品の使用者に対しては、メーカーへの通知を「努めなければならない」としているだけだ。また、介護ベッドには在宅用もあるが、ほとんどがレンタル。遺族やレンタル事業者が伝えないとメーカーは事故をつかめない。


 経産省によると、一般的な製品では、軽微な事故は重大事故の数倍あるという。


 経産省は「介護ベッドの実際の使用者とメーカーの間に病院やレンタル事業者が介在することで、事故情報がメーカーに入りにくくなっている」とみて、メーカーに対し、レンタル事業者から事故情報を集めるよう求めた。


 また、柵や手すり自体の安全性を高める必要があると判断。手すりはJIS基準がなく、日本福祉用具・生活支援用具協会(JASPA)と協力して今年度中に定める方針。柵については今のJISの見直しを検討している。(茂木克信)


 ベッド柵で首挟み死亡、理学療法士を書類送検へというエントリーで、医療・介護ベッド安全普及協議会が作成したベッド柵類でのはさまれについてのご注意(PDF)というパンフレットをご紹介した。医療・介護ベッド安全普及協議会とは、介護用ベッド事故多発を受け、関連業界が自主的に集まって設立したものである。


 介護用ベッド使用中の重大事故が問題となっている。関連する要因として、利用者の状況、介護者の知識・技術、そして、福祉用具等環境因子がある。入院中に事故が起きた場合、医療職が事故の責任をとらされる可能性がある。一方、介護用ベッド業界も、製造物責任の立場から巨額の賠償金を請求されるおそれがある。両者とも真剣な対応を迫られている。


 これまで、居室内の事故に関しては、転倒予防対策が中心だった。今後は、介護用ベッドはさまれ事故も要対策案件に加える必要がある。起き上がりや移乗が自立している場合は、はさまれ事故は起き難い。一方、中途半端に動ける場合および全介助の時、はさまれ事故に注意が必要となる。


 医療機関介護施設では、介護用ベッド等福祉用具の定期的チェックが求められる。事故が起きてからでは遅い。リスク管理の質向上により患者や利用者の安全を守る、この姿勢が組織を守ることに通じる。介護用ベッド業界にはヒューマンエラーを防ぐ製品作りを行って欲しい。医療機関介護施設、介護用ベッド業界両者が協調して、軽微な事故を含めた情報収集を行い、再発予防対策に結び付けていくことが安全性向上の鍵を握る。