社会保障国民会議、社会保障抑制路線の修正求める

 朝日新聞社会保障抑制路線の修正求める 国民会議が中間報告骨子より。

社会保障抑制路線の修正求める 国民会議が中間報告骨子

2008年6月13日1時41分


 政府の社会保障国民会議(座長・吉川洋東大教授)は12日、中間報告の骨子を公表した。社会保障費の伸びを抑えようとした小泉政権の一連の改革を「一定の成果を達成」と評価しながらも、改革に伴う弊害に言及。今後はサービスの維持・向上に重点を置くべきだとして、給付抑制路線の修正と負担増を含む必要な財源確保を求めた。


 中間報告は19日に福田首相に報告される。最終報告は9月の予定だが、首相は早急に対応が必要な課題について、ただちに関係閣僚に取り組みを指示する見通しだ。首相は一方で、社会保障費の自然増を5年間で1.1兆円抑える方針を堅持する考えを明確にしており、ただちに抑制路線が見直されるかは不透明だ。


 骨子は、医療保険の本人3割負担の導入や年金改革、後期高齢者医療制度の導入など、小泉政権下の改革で「制度の持続可能性は高まった」と評価。一方で、「十分対応できなかった問題、改革の過程で新たに生じた問題」として、給付切り下げや自己負担増に対する高齢者の不安の広がりや産科・小児科での医師不足、地域医療の崩壊などを列挙。今後は「必要なサービスを保障し、国民生活の安定を確保する社会保障の機能強化」に改革の重点を置くよう促した。


 具体策としては、社会保険の適用範囲を非正規労働者へ拡大▽地域における医療のネットワーク化▽診療報酬体系の見直し▽子育て支援サービスの再構成と財源の集中投入ーーなどを掲げた。現行の保険料方式を維持するか、税方式に転換するかが論点になっている基礎年金については、「客観的・実証的データに基づく議論が不可欠」などと指摘するにとどまった。


 公的年金制度への不信の増大については、「制度それ自体の問題というより、運営にかかわる政府に対する信頼の低下に起因する面が大」と指摘。厚生労働省社会保険庁に信頼回復のために総力を挙げるよう注文を付けた。


 骨子は最後に、社会保障の機能強化のための財源の必要性を強調。制度の効率化に努めつつ、「速やかに負担についての国民合意を形成し、国・地方を通じた必要な財源の確保を図る」よう求め、増税の必要性を示唆した。ただ、負担増の具体的なあり方については言及していない。(竹中和正)


 政府が設置した諮問機関の意見が割れている。経済財政諮問会議は、ひたすら社会保障費抑制を継続しようとしている。一方、社会保障国民会議は、負担増を示唆しながら、「必要なサービスを保障し、国民生活の安定を確保する社会保障の機能強化」に改革の重点を置くよう促している。


 政府として、どちらの路線を重視するか決めかねているように見える。社会保障切り捨ての批判はこわいが、増税に対する反発も避けようとしている。国のあり方自身に関わる問題であるにも関わらず、衆議院選挙をにらみ、目先の対応に終始している。