非正規雇用恒常化はドーピングと同じ違法かつ不公平な所業

 以前のエントリーでご紹介した正規雇用者と非正規雇用者の推移が更新されている。2008年度のデータが加わった。

 正規雇用者は1997年までは増加していたが、それ以降、2006年まで減少し、07年には増加したが08年には再度減少した。非正規雇用者はこの間一貫して増加している。


 この結果、非正規雇用者比率は1990年の20.0%から2008年の33.9%へと大きく上昇した。いまや3人に1人以上は非正規雇用者である。


 2007年度に若干増えた正規雇用者が再び減っている。2007年度から2008年度にかけて、正規雇用者は3,371万人から3,348万人に減少した一方、非正規雇用者は1,706万人から1,719万人に増加している。


 パート・アルバイト等非正規雇用者比率の推移(年齢別)により詳しい情報がある。

 男性平均では、1997年に10%を超え、2008年には18.6%に達している。女性の平均では、2003年以降、半数を越えるに至っている。


 特に、男女とも15〜24歳の若者の非正規比率が急激に高まっており、いわゆるフリーターの増加を裏づけるものとなっている。


 近年は若者のこうした非正規雇用とそれ故の低所得が、格差を生み、将来の生産性への制約となり、また少子化の大きな要因となっていることがしばしば指摘される。


(中略)


 少子化については、労働経済白書のデータに基づき、下の図で、男子雇用者の正規、非正規別の有配偶率(結婚している比率)を年齢別に見ると、非正規従業員の有配偶率は、非正規従業員の半分前後となっており、非正規労働者の増加が、非婚を通じて、少子化につながっていることが確認される。


 非正規雇用で国家財政に膨大な負担発生というエントリーで、非正規雇用の増加が将来的に生活保護受給者を増やし、国家財政を圧迫する可能性について紹介した。今回紹介したデータをみると、非正規雇用者比率の増加が少子化にも関係していることがわかる。


 短期的な企業経営だけをとってみると、非正規雇用者を雇った方が安上がりである。しかし、国家というマクロな視点でみると、少子化進行や生活保護受給者の増加というマイナス面が大きい。企業にとっても人材確保の面で非正規雇用に依存することには問題がある。


 人件費削減のために非正規雇用を恒常化させることはドーピングと同じ違法かつ不公平な所業である。社会の健全な発展にとってあまりにもデメリットが多い。また、雇用ルールを守っている企業と抜け穴を利用している会社との間に不公平が生じる。労働問題に関する規制強化が求められる。しかし、審判の役割を果たすべき行政が法律違反に対し見て見ぬ振りをしている。そればかりではなく、規制緩和という言葉を使い、労働市場の自由化を奨励している。
 ドーピングをした選手に対し、ファンはブーイングをし、非難の意思を示す。同様に、違法労働行為を行っている企業に対してはその会社の製品を購入しないことで、意思表示を示すしかない。ただし、消費者が実際に活動することは難しい。なぜならば、不当労働行為があまりにも蔓延しているために、どの商品も買うことができないというジレンマに陥ることが懸念されるからである。