李啓充先生が週刊医学界新聞に連載していた緊急論考が完結した。「小さな政府」が亡ぼす日本の医療(8)より、最終部分を引用する。
「大タワケ」か「邪悪な意図の持ち主」
一方,福田首相の肝煎りで発足した社会保障国民会議の座長にいたっては「今後の医療費の増加分は民間保険などでまかない,公的保険の適用対象を大きくは広げない意向を示唆,……持続可能な制度にする必要があるとの認識を示した」とされ(2008年2月26日毎日新聞より),皆保険制を取り崩して米国型の「無保険・低保険」社会実現への道を開こうとしているのだから何をかいわんやである。
あえて厳しい言葉を使う。もし,テレビや街頭で,「国民負担率を低く保つためには医療費を抑制しなければならない。公的負担は限界に達しているから持続可能な制度とするためには保険外診療を拡大しなければならない」などとしたり顔で主張する政治家を見かけたら,「何も知らない大タワケ」か「国民をたぶらかそうとする邪悪な意図の持ち主」のどちらか(あるいはその両方)なのだから,そんな政治家には,間違っても票を入れてはならないのである。
毎日新聞の記事が伊関友伸先生のブログに紹介されているので、引用する。社会保障国民会議:公的保険適用対象、大きくは広げぬ意向より。
社会保障国民会議:公的保険適用対象、大きくは広げぬ意向
毎日新聞 2008年2月26日
政府の社会保障国民会議の吉川洋座長(東京大大学院教授)は26日の同会議分科会で、患者の自己負担分も含めた国民医療費(05年度33兆円)が今後も伸びていくことは認める一方、保険料と税で負担する公的医療費(同28兆円)については「範囲をどう見極めるか議論しなくてはいけない」と述べた。今後の医療費の増加分は民間保険などでまかない、公的保険の適用対象を大きくは広げない意向を示唆したものだ。
吉川氏は医療技術の進歩が高齢化を促し、医療費を押し上げていると指摘。公的医療費でカバーする範囲については「国民のコンセンサス」としながらも、持続可能な制度にする必要があるとの認識を示した。
委員からは保険診療と保険外診療を併用する混合診療の解禁を求める意見も出た。吉川氏の姿勢は保険外診療の拡大を求める側を後押しする可能性もある。【吉田啓志】
李啓充先生の指摘は小気味がよく、溜飲が下がる。社会保障国民会議には、「何も知らない大タワケ」か「国民をたぶらかそうとする邪悪な意図の持ち主」が紛れ込んでいるようだ。