「医療費適正化」の仕掛け、七十五歳以上の医療はみとりの医療

 「ある経営コンサルタント」というブログにいつもお世話になっている。5月7日、後期高齢者医療制度というエントリーが掲載された。1) 何故75歳で線を引くか?、2) 医療費抑制が目的、3) 誰が得をする制度か?、4) 国会審議、という順で後期高齢者医療制度の問題点が詳細に記載されている。
 2) 医療費抑制が目的、という部分で次のような記述がされている。

 参議院厚生労働委員会で法案の審議が、2006年5月23日に始まりましたが、その時の西島英利委員(自民)の質問とそれに対する水田邦雄君厚生労働省保険局長の答弁によく出ています。(国会での答弁の通りに、国民に説明をしないのは、国民に対する裏切りみたいに思えるのですが)


 出所を探していたら、西島英利参議院議員のホームページにたどりついた。活動報告[ 2006年05月24日 ]より該当部分を引用する。

<レポート>
[ 2006年05月24日 ]
参議院厚生労働委員会医療制度改革関連法案について質問(東京都)


(中略)


後期高齢者医療制度について
 それでは、もうちょっと時間はございますけれども、高齢者医療制度の、特に後期高齢者医療制度につきまして、本来この後期高齢者医療制度は、ある意味では医療費の適正化のために実はつくられた制度と私は理解をいたしております。
 ですから、七十五歳以上の医療はみとりの医療なんだというふうに考えまして、ある意味では包括的な医療ということにしたらどうかというのを、当時私が日本医師会に在籍していましたときに自民党に御提案申し上げて、健康保険法の附則の中に書き込んでいただき、今回制度化されているというふうに私は理解をいたしております。
 となりますと、まさしく医療費適正化のための一つの方法でございますので、まさしくこの後期高齢者医療制度が導入されて、どのくらい、じゃ医療費の適正化が行われるのかと、本来やっぱり数値は出していかなきゃいけないはずでございますけれども、まだ厚生労働省の方からそういう数字はほとんど聞いておりません。
 この件について何か御見解があればお教えいただきたい。


○政府参考人(水田邦雄君) 後期高齢者医療制度の創設に当たりましては、後期高齢者の心身の特性等にふさわしい診療報酬体系の在り方につきましては今後検討していくということとしてございます。
 したがいまして、医療費適正化に資する観点からはこの診療報酬のほかにも様々な仕組みについては織り込んでおりますけれども、ただいま委員御指摘のような、包括化にしたらどうなるかといった具体的な適正化効果ということは、そういったことはまだそこまで踏み込んではいないわけでございます。
 正にこの後期高齢者は、前期高齢者に比べまして生理機能の低下による疾病が増加すると、特に入院が増加すると、こういう傾向にあることを踏まえて、その心身の特性にふさわしいものを、診療報酬の体系をつくるという、そこまでが決まっているわけでありまして、そこから先のことにつきましてはこれから検討するということで、具体的にそのものとして医療費適正化効果を見込んでいるわけではございません。
 ただ、医療費適正化、これは平均在院日数の短縮でありますとかあるいは予防の導入と、こういったことがございますので、後期高齢者に係る医療費につきまして申し上げますと、二〇一五年、平成二十七年段階で、改革を実施しない場合医療費ベースで十八兆円という見通しが、改革の実施後は十六兆円、それから二〇二五年段階では、改革前で医療費ベースで三十兆円との見通しが、改革実施後は二十五兆円と、このような数字を医療費について持っているところでございます。


西島英利君 改革といいますか、制度を変えるときには当然そういう数値は、だってこれはお得意ですよね、仮置きの数字というのは、私はやっぱり出しておく必要性があるだろうと。でないと、どのような医療給付を我々受けることが、つまり高齢者の方が受けることができるのか、これは一番の関心事だと私は思うんですよ。保険者がどうなのかとか、保険料がどうなるとか、自己負担が一割になるとか、そうではなくて、どのような医療を自分たちは受けることができるのか、これが一番の関心事なんですね。
 ですから、その議論がされないままずっと来て、しかも将来推計はまだしていないということは、やはりこれは問題だろうというふうに思っています。


(後略)


 「医療費適正化」は「医療費削減」と同義語である。西島議員は、日本医師会の要職にあり、医師会の政治団体である「日本医師連盟」の推薦を受け、参議院議員に当選した。その西島議員が「医療費適正化」の旗ふりをしたことを自慢している。
 西島議員の功績は、後期高齢者医療制度による「医療費適正化」効果の数値を引き出したことである。2025年段階で、30兆円必要な後期高齢者に対する医療費を5兆円削減し、25兆円にまでしようとしている。


 ついでなので、最近の西島議員の活躍をごく一部だけレポートする。委員会質問実績[ 2008年04月25日 ]より。

<レポート>
[ 2008年04月25日 ]
第169国会 2008年4月22日 13:30〜15:10
参議院厚生労働委員会後期高齢者医療制度新型インフルエンザ対策について


(中略)


 そこで、もう一つ。それも含めた形の中で、もう一度これは大臣に御感想をお聞かせいただきたいんですが、今まさしく、年寄りは早く死ねということかと。それから、先ほども足立委員から終末期医療の話がちょっと出てまいりましたけれども、この若い人たちと高齢者との間に医療のレベルが違ってはいけないと私は思うんですね。ところが、どうしてもそういう誤解が今生じてきている。ですから、是非そういう医療のサービスの違いはないんだということを是非、大臣がそう思っておられるのであれば明確に言っていただければなというふうに思っています。


(中略)


西島英利君 今、自民党の中で一つのプロジェクトチームができていまして、人生百年設計という考え方をしているんですね。つまり、最初は九十年でどうかということだったんですが、意見をいろいろと聞きますとやっぱり百年、百歳ということがもう目の前に来ているということでございます。そうしますと、七十五歳になってもまだ二十五年あるんですよ。これは一つの大変な生活の何といいますか、そのレベルをどういう形でそれを保っていくのかという非常に重要なことでもございます。そういう意味で、今大臣がおっしゃったようなことは非常に重要でございますので、是非これを保っていただきたい。それがある意味では医療を提供する側、受ける側も安心につながっていくだろうというふうに思いますので、是非お願いを申し上げたいと思います。


(後略)


 2006年当時は、七十五歳以上の医療はみとりの医療なんだ、だから包括化しようと提案したといった議員が手のひらを返したような国会質問をする。
 2010年の改選時に、全国の医師会員は本当にこの人を推すのだろうか。