健康問題、生活問題と自殺率の増加
後期高齢者医療制度を苦にしたと思われる心中事件があった。新聞記事の紹介はせず、概要のみを記載する。
調べによると、Aさんは2人暮らしで、足腰の痛みなどで体が不自由だった母親のBさんの介護をしていた。遺書は自宅居間のこたつの上に置いてあった。「生きるのが嫌になった」などとする趣旨の文言だったという。
近くの男性は「母親の体調のことで悩んでいるようだった」。また、別の男性によると、後期高齢者医療制度(長寿医療制度)でこれまで保険料負担のなかったキミ子さんの保険料が生じることについて、安男さんが「支払うのが大変になる」と漏らしていたという。
悼ましい事件である。お二人のご冥福を心からお祈りする。
ここ数年不気味な勢いで自殺率は増加している。厚労省ホームページ内に、自殺死亡統計の概況 人口動態統計特殊報告、という統計資料がある。
(1) 自殺死亡数の年次推移
自殺死亡数の年次推移をみると、明治32年の5,932人から昭和11年の15,423人までは増加傾向を示しているが、昭和12年から戦時中まで減少傾向となっている。
戦後は、再び増加傾向となるが、戦前と異なり、増減を繰り返し、過去2回の高い山があり最近も1つの山を形成している。1番目の山は毎年2万人を超えた昭和29年〜35年であり、2番目の山は毎年2万3千人を超えた昭和58〜62年である。最近の山は3万人前後で推移している。
警察庁「自殺の概要」の部分に、自殺の動機が記載されている。遺書がある10.387例中、健康問題が3,890例37.5%、経済生活問題が3,654例35.2%である。
富裕層の場合、後期高齢者医療制度の保険料は些細なものだろう。一方、貧困層にとっては、たとえ少額でも経済的負担が増えることは希望を失うことにつながる。
後期高齢者医療制度が、今回の事件の原因だったかどうかは不明である。しかし、自殺率の増加とその動機をみる限り、現在の政治のありように問題があることは間違いない。