激震2−障害者自立支援法施行(2006年)

 社会福祉基礎構造改革の一環として、2003年4月より障害者福祉サービス利用の仕組みがそれまでの措置制度から障害者支援費制度に変わった。


 障害者支援費制度では、市町村の調査に基づき、利用者負担額が決定された。その上で、利用者はサービス事業者と契約を結び、与えられたサービス内容に対して支援費が支給された。契約方式となったことは介護保険と同様であったが、財源は全て公費だった。また、利用者負担は応益負担ではなく、応能負担だった。
 障害者支援費制度施行に伴い、障害者の在宅サービスは増え、初年度(2003年度)の給付費は対前年比で6割増となり、利用者は在宅・施設あわせ約32万人となった。「こうした状況に対して、障害者の地域生活を支援する観点から評価する声がある一方、財源不足をはじめ財政基盤をめぐる懸念が急速に高まっている。」という指摘が厚労省からなされていた。(参考介護保険制度の見直しに関する意見)のPDFファイル68−80ページ)


 2005年10月、障害者自立支援法が成立し、2006年4月に施行された。障害者自立支援法では、これまで応能負担が原則だった障害者医療・福祉サービスに定率(応益)負担を導入することになった。もともと低所得者が多い障害者にとって、大幅な負担増につながる内容であり、障害者団体による反対運動が現在も継続されている。


 国際的な障害者運動のなかで、自立生活Independent living(IL)という概念が確立している。リハビリテーション医学テキスト(三上真弘、石田暉編、南江堂)より引用する。

 意思決定あるいは日常生活における他人への依存を最小ならしめるために、自分で納得できる選択に基づいてみずからの生活をコントロールすることであって、それは、自分の仕事を自分でやりとげること、地域社会のその日その日に参加すること、一定の範囲での社会的役割を果たすこと、自分で意思決定をすること、他人への心理的あるいは身体的依存を最小ならしめるように決意することなどを含む。ここで自立というのは一人一人の人ごとに個別的に定義しなければならない相対的な概念である。

 この思想はリハビリテーションに固有のものではなく、戦後の米国で起こった社会思想の発展の中で生まれてきたものである。自立生活運動は弱者自身による弱者のための運動である。障害者も弱者であり、この運動がリハビリテーションに取り入れられ、リハビリテーションの主人公である障害者自身の決定を重んじることとなった。自立生活の思想では、生活が自立できなくても、その他の知的社会活動が可能になればリハビリテーションは成功したと考える。介助を受ける場合も介助者が障害者の生活を指導するのではなく、障害者の主導で自分でできないことを介助してもらうという関係、すなわち障害者が主であり介助者が従という関係が重要であるとしている。


 障害者自立支援法では、経済的理由で利用できるサービスが左右される。自立生活運動の概念と相容れない考え方である。障害者自立支援法は、これまで積み重ねられてきた障害者施策に逆行するものなり、多大な被害を及ぼした。