中医協答申−後期高齢者医療制度

 後期高齢者医療制度の全体像が未だにつかめない。


 保健福祉介護保険の情報サイト ウェルに「特集 医療制度改革」内に後期高齢者医療制度の特集がある。後期高齢者医療制度の概要を把握するうえで、最も分かりやすく、参考にしている。しかし、このサイトを見ても、保険料徴収の仕組みは分かるのだが、実際に診療現場でどのような対応が必要か皆目検討がつかない。特に外来担当医の件が全く分からない。


 中医協答申がでた。中央社会保険医療協議会総会平成20年2月13日資料の中の、資料(総-1)全体版と、資料(答申書)(別紙1)全体版をもとに、後期高齢者診療料の問題に限って、検討する。


 資料(総-1)全体版PDFファイルのベージ数で170に概要が記載されている。また、資料(答申書)(別紙1)全体版PDFファイルのベージ数88-289に詳しい資料が載っている。

第1 基本的な考え方
 後期高齢者の外来医療に当たっては、治療の長期化、複数疾患のり患といった心身の特性等を踏まえ、慢性疾患等に対する継続的な管理を行うことを評価する。


第2 具体的内容
 患者の同意を得た上で他の医療機関での診療スケジュール等を含め、定期的に診療計画を作成し、総合的な評価や検査等を通じて患者を把握し、継続的に診療を行うことを評価する。


(新設) 後期高齢者診療料 600点(月1回)
[算定要件]
1 保険医療機関である診療所又は当該病院を中心とした半径4キロメートル以内に診療所が存在しない病院
2 入院中の患者以外の患者であって別に厚生労働大臣が定める慢性疾患を主病とするものに対して、後期高齢者の心身の特性を踏まえ、患者の同意を得て診療計画を定期的に策定し、計画的な医学管理の下に、栄養、運動又は日常生活その他療養上必要な指導及び診療を行った場合に算定できる
3 診療計画には、療養上必要な指導及び診療内容、他の保健・医療・福祉サービスとの連携等を記載すること
4 毎回の診療の際に服薬状況等について確認するとともに、院内処方を行う場合には、経時的に薬剤服用歴が管理できるような手帳等に薬剤名を記載する
5 患者の主病と認められる慢性疾患の診療を行う1保険医療機関のみにおいて算定する
6 当該患者に対して行われた医学管理等、検査、画像診断、処置は後期高齢者診療料に含まれる。ただし、病状の急性増悪時に実施した検査、画像診断及び処置のうち、550点以上の項目については別途算定できる
7 当該診療所(又は医療機関)に次のそれぞれ内容を含めた研修を受けた常勤の医師がいること
・高齢者の心身の特性等に関する講義を中心とした研修
・診療計画の策定や高齢者の機能評価の方法に係る研修
[対象疾患]
 糖尿病、脂質異常症、高血圧性疾患、認知症 等


 高齢者の包括性の外来医療となると、1996年に導入されその後廃止となった老人慢性疾患外来総合診療料(外総診)を思い出す。外総診が1,470点(院外処方の場合)だったのに対し、後期高齢者診療料はわずか600点である。また、実に細かい規定がある。「高齢者の心身の特性等に関する講義を中心とした研修」、「診療計画の策定や高齢者の機能評価の方法に係る研修」はいったいいつから始まるのだろう。本当に、今年4月から後期高齢者医療制度を始めるつもりなのだろうか。


 後期高齢者は多彩な疾患を持っている。内科だけでなく、整形外科、眼科、耳鼻咽喉科、歯科などに通院している患者もいる。その全ての診療計画を診療所の医師が策定するということが、日本の医療の現状からみて可能なのだろうか。


 中医協で検討されていた「高齢者担当医(仮称)」という名称は姿を消した。また、初診料・再診料を別建てにするという案も消えた。介護保険が導入された時と比べ、全くといって準備がされていない。現場が混乱する様子が今から目に浮かぶ。