回復期リハビリテーション病棟に対する成果主義導入

 「回復期リハビリテーション病棟の要件に、施行的に質の評価に関する要素を導入し、居宅等への復帰率や、重症患者の受入れ割合に着目した評価を行う」という件に対し、反対の立場で意見を述べます。


 居宅等への復帰率は、患者側の要因(退院時ADL、同居家族数などの介護力など)が関係します。開始時ADLが低く介護力がない患者は、自宅退院率を引き下げるという名目で選別される可能性が高くなります。そもそも成果主義を「医療の質」の評価に導入することに無理があります。例えば、癌の進行度や年齢構成、併存疾患を考慮せず、5年生存率を比較することは不可能です。
 中医協 診-2-3(平成19年11月30日)の資料に紹介されている「日常生活機能指標」はそもそもハイケアユニットのために開発されたものであり、リハビリテーション医療とは無縁のものです。患者の重症度、改善率を測定するツールとしては不適切です。
 適応があっても患者選別のため不十分な医療しか受けられない患者が増えることは、医療経済的にも妥当ではありません。重篤な患者や要介護者が増えると、医療費・介護費用が増大するという悪循環が生じます。医療費抑制にとらわれリハビリテーション医療へのアクセスを制限することは、めぐりめぐって国家財政を圧迫します。
 リハビリテーション医療に関する2006年度診療報酬は国民の大きな批判を浴び、2007年度に異例の改定が行われる事態となりました。評価が定まっていない医療を「施行的に」行うということは、医の倫理上も許されることではありません。もし、成果主義を導入するのでしたら、診療報酬改定とは別に、研究事業として補助金をつけて実施すべきではないかと存じます。