成果主義に関する配信記事

 次のような記事が、Japan Medicineから配信された。

 2008年度診療報酬改定トピックス/回復期リハ病棟 成果主義導入のインパクト 患者排除にならない仕組みづくりが重要 適正な評価を受けるインフラ整備をスタート


記事:Japan Medicine
提供:じほう

【2008年1月7日】


 2008年度診療報酬改定では、新たな試みとして回復期リハビリテーション病床の質的向上を目的に成果主義、いわゆる実績主義が導入される見通しだ。初台リハビリテーション病院理事長の石川誠氏(全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会会長)は、「成果主義の導入に当たっては、重症の患者および大きな改善が期待しにくい患者の排除につながらない仕組みつくりが不可欠だ」とし、回復期リハビリ病棟の新たな試行的取り組みに対応したインフラ整備を進めていく考えだ。


専従医要件の緩和に難色


 リハビリは、2年前の06年度改定で疾患別体系が導入され、現場に驚きと戸惑いが生じ、社会的にも大きな反響を呼んだ医療の1つだ。今春の08年度改定では、その象徴として、回復期リハビリ病棟入院料に実績に応じた評価、いわゆる成果主義が導入される。
  石川氏は、08年度改定を本体部分プラス改定ながら厳しい対応を迫られるとみている。中でも難色を示しているのが、回復期リハビリ病棟における現行基準の専従医要件の緩和だ。
  この背景には、もともと制度再編に関係なく回復期リハビリ病棟を選択し運営している病院に加え、11年度末に介護療養病床が廃止されることを受け、回復期リハビリ病棟に移行する病院が出ている点が挙げられる。


新たな評価指標に取り組みでセミナー


 石川氏は、「専従医要件の緩和は、点数引き下げへの引き金になるばかりでなく、一定の質的担保の指標が消えることにもなる」とし、成果主義の中でも人的要件を残すことが必要だと主張している。特に、回復期リハビリ病床の量的拡大が進むとみられるだけに、石川理事長の苦悩も深い。
  さらに、回復期リハビリ病棟の質的評価では、ADL改善指標の候補として日常生活機能指標(いわゆる看護必要度B得点)が提案されている。
  看護必要度の活用に対する全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会の決断は早かった。
  同協議会では、看護必要度に対する理解を進めるためのセミナーの開催や、看護必要度とFIM、BIのデータの相関性の検証事業をスタートさせる方針だ。回復期リハビリ病棟を持つ病院が、適正な評価を得ることができるようインフラ整備を進める。その点からも08年度改定は、回復期リハビリ病棟の次世代への幕開けになる。


脳血管系Iの点数、2段階設定を要望


 一方、今春のリハビリ改定のもう1つの焦点は、疾患別リハビリ施設基準の見直しだ。日本リハビリテーション医学会が強く主張していた総合リハビリの復権が、要望書から消えていた。その経緯について、石川氏は、「まだ、その時期ではないと判断したのだろう」と、多くを語らない。
  今では、むしろ脳血管系リハビリのIとIIの点数格差が大きい点が問題になっているという。そこで、脳血管系Iを2段階評価するよう強く要望。さらに、心大血管系Iの施設基準も現場の状況を反映する形に緩和するよう求めている。
  石川氏は、「前回の改定から、いろいろな意味でリハビリに関心が集まった。課題も多かったが、収穫もあった。今年の改定が、どういう結果になるのか分からないが、患者にとって信頼できるリハビリ医療が提供できるような制度設計を期待している」と語った。


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 以前より、全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会は、手厚い人員配置がある病棟をハイグレード型として診療報酬上評価するように求めていた。また、日本リハビリテーション医学会は、疾患別リハビリテーション料の上位概念として総合リハビリテーション料を復活させることを目指していた。しかし、いずれも今回の診療報酬改定では認められるところとはならなかった。
 逆に、専従医の要件が緩和されることになった。「この背景には、もともと制度再編に関係なく回復期リハビリ病棟を選択し運営している病院に加え、11年度末に介護療養病床が廃止されることを受け、回復期リハビリ病棟に移行する病院が出ている点が挙げられる。」という文章をみる限り、厚労省は、療養病棟から回復期リハビリテーション病棟への移行を推進するという基本姿勢を持っていると思われる。


 石川誠氏は、成果主義の是非については、述べていない。しかし、「看護必要度とFIM、BIのデータの相関性の検証事業をスタートさせる方針」という部分を読む限り、全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会が看護必要度導入を望んだものではないと推測できる。


 疾患別リハビリテーション料の見直しにも言及されている。「今では、むしろ脳血管系リハビリのIとIIの点数格差が大きい点が問題になっているという。そこで、脳血管系Iを2段階評価するよう強く要望。さらに、心大血管系Iの施設基準も現場の状況を反映する形に緩和するよう求めている。」という部分の背景には、運動器リハビリテーションの基準に比べ、脳血管疾患等リハビリテーション料Iの基準が厳しすぎることがある。


 前回診療報酬改定においては、関連医学会の縄張り意識によりリハビリテーション医療に関する診療報酬改定は歪められた。今回は、回復期リハビリテーション病棟の量的拡大優先のために、人的基準が緩和された。そして、全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会の要求の一部にすぎなかった成果主義が、厚労省の医療費抑制政策に利用されることになった。


 リハビリテーション医療に関わる診療報酬は、リハビリテーション専門職にも理解不可能ないびつな体系に変えられようとしている。