再編・ネットワーク化は実現困難

 公立病院改革懇談会(第1回)資料の19〜25ページに全国の自治体病院の改革事例が列挙されている。


 厚生労働省の医療施設調査(平成17年10月1日)によると、全国に自治体立病院が1,060ある。既に1/4近くの自治体病院がなんらかの改革に手をつけている。そして、その多くは経営形態の見直しである。再編・ネットワーク化は、全国的にみてもまだ少数派である。


 経営形態の見直しは、単独の病院・自治体で検討可能である。しかし、再編・ネットワーク化となると、複数の病院、経営体、自治体が絡み合う。将来展望を明らかにし、強力なリーダーシップを示さない限り、実現困難である。
 最大の問題は、医師派遣機能である。基幹病院は、高度・先進的医療や救急医療を行っている。また、診療科も多く、専門分化している。医師数が見かけ上多くても、他の医療機関に派遣できるほどの余力はない。また、基幹病院で求められる医療と、中小病院や診療所など住民に近いところで求められる医療は異なる。派遣する側と受ける側のミスマッチが生じる。実際、国立病院機構間で行われた医師派遣は成功せず、短期間で終了した(参考資料:東京日和@元勤務医の日々、役人の思惑違い緊急医師派遣、2007年5月18日付)。
 統合され、吸収される病院側からすると、自分の存在意義を否定されたような気持ちとなる。頭ごなしに病床廃止を告げられたために、病院を立ち去った医師もいる。灰皿が飛び交うような激しい議論の末、病院から診療所への転換を合意したところもある。いざ、統合・再編してみれば、荷を分かち合う病院が消え、基幹病院に全ての課題が押し付けられるといった悲劇も予想される。

 自治体病院改革の目玉として示された再編・ネットワーク化は、実現困難だろう。少なくとも、昨年実施された療養病床廃止のように猫の目のように変わる厚生労働行政に対し、信頼が失われている現状では、火中の石を拾うようなマネは誰もしないだろう。