ADL維持向上等体制加算の施設基準の見直し等

 2016年3月4日、平成28年度診療報酬改定についてが更新され、告示・省令、通知が示された。膨大な資料のなかで重要と思われるものは、平成28年度診療報酬改定説明会(平成28年3月4日開催)資料等について内にある、平成28年度診療報酬改定説明(医科) III-1 通知その02III-1 通知その05、そして、III-1 通知その06である。
 今回は、ADL維持向上等体制加算の施設基準の見直し等について検討する。

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 ADL維持向上等体制加算は、25点→80点と3.2倍の大幅増となっている。単純計算をすると、施設基準を満たした50床の病棟で全ての患者が14日以下だとすると、1日あたりのADL 維持向上等体制加算点数は、50×80=4,000点となり、30日あたりに換算で120,000点となる。これまで取得する医療機関は少数だったが、今後の増加が期待される。


 ADL維持向上等体制加算の施設基準の見直しについては、上記厚労省診療報酬改定説明資料はあっさりとしすぎているので、関連資料から重要な改定内容を抜粋する。

4の8 ADL維持向上等体制加算の施設基準


 7対1入院基本料(一般病棟入院基本料、特定機能病院入院基本料(一般病棟に限る。)及び専門病院入院基本料)又は10対1入院基本料(一般病棟入院基本料、特定機能病院入院基本料(一般病棟に限る。)及び専門病院入院基本料)を算定する病棟において、以下の基準を満たすこと。
(1) 当該病棟に、専従の常勤理学療法士、常勤作業療法士又は常勤言語聴覚士(以下「理学療法士等」という。)が2名以上配置されていること。又は専従の理学療法士等が1名、かつ、専任の理学療法士等1名以上が配置されていること。なお、複数の病棟において当該加算の届出を行う場合には、病棟ごとにそれぞれ専従の理学療法士等が配置されていること。また、当該理学療法士等(専従のものに限る。)は、区分番号「H000」心大血管疾患リハビリテーション料、区分番号「H001」脳血管疾患等リハビリテーション料、区分番号「H001-2」廃用症候群リハビリテーション料、区分番号「H002」運動器リハビリテーション料、区分番号「H003」呼吸器リハビリテーション料、区分番号「H004」摂食機能療法、区分番号「H005」視能訓練、区分番号「H006」難病患者リハビリテーション料、区分番号「H007」障害児(者)リハビリテーション料、区分番号「H007-2」がん患者リハビリテーション料、区分番号「H007-3」認知症患者リハビリテーション料及び区分番号「H008」集団コミュニケーション療法料(以下(1)において「疾患別リハビリテーション等」という。)を担当する専従者との兼務はできないものであること。当該理学療法士等(専従のものに限る。)がADL維持向上等体制加算の算定を終了した当該病棟の患者に対し、引き続き疾患別リハビリテーション等を算定すべきリハビリテーションを提供する場合は、1日6単位まで算定できる。
 ただし、当該病棟内に区分番号「A308-3」に規定する地域包括ケア入院医療管理料1又は2を算定する病室がある場合には、当該病室における理学療法士等の業務について兼務しても差し支えない。


(略)


5) アウトカム評価として、以下の基準を全て満たすこと。患者のADLは、基本的日常生活活動度(Barthel Index)(以下「BI」という。)を用いて評価することとする。
 ア 直近1年間に、当該病棟を退院又は転棟した患者(死亡退院を除く。)のうち、退院又は転棟時におけるADL(「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(平成28年3月4日保医発0304第3号)の別添1の2の別紙様式7の2の合計得点をいう。以下(5)において同じ。)が入院時と比較して低下した患者の割合が3%未満であること。なお、入院日から起算して4日以内に外科手術を行い、当該外科手術の日から起算して3日目のADLが入院時より30以上低下した場合は、退院又は転棟時におけるADLは、入院時のADLとではなく、当該外科手術の日から起算して3日目のADLと比較するものとする。


 まず、専従要件が1名から2名へと変更されている。専従2名よりは専従1名+専任1名の組み合わせが現実的であり、後者の方を選択する医療機関がほとんどと推測する。なお、地域包括ケア入院医療管理料の専従理学療法士等との兼務ができることには変更がない。
 アウトカム評価に関しては、外科手術患者の場合には、手術施行後にADLが下がることが予想されるため、入院時のADLではなく、手術後3日目のADLと比較するという条項が加わった。これも現実的な改定である。

A100 一般病棟入院基本料


(13) 「注12」に規定するADL維持向上等体制加算は、急性期医療において、入院中の患者の日常生活機能(以下「ADL」という。)の維持、向上等を目的として、リハビリテーション専門職等が当該病棟に置いて以下のアからケまでに掲げる取組を行った場合であって、あらかじめ専従又は専任を含む常勤理学療法士、常勤作業療法士又は常勤言語聴覚士(以下(13)において「常勤理学療法士等」という。)をあわせて5名を上限として定めた上で、当該常勤理学療法士等のいずれかが当該病棟で実際に6時間以上(ADL維持向上等体制加算の算定を終了した当該病棟の患者について、引き続き、区分番号「H000」心大血管疾患リハビリテーション料、区分番号「H001」脳血管疾患等リハビリテーション料、区分番号「H001-2」廃用症候群リハビリテーション料、区分番号「H002」運動器リハビリテーション料、区分番号「H003」呼吸器リハビリテーション料、区分番号「H004」摂食機能療法、区分番号「H005」視能訓練、区分番号「H007」障害児(者)リハビリテーション料、区分番号「H00 7-2」がん患者リハビリテーション料、区分番号「H007-3」認知症患者リハビリテーション料又は区分番号「H008」集団コミュニケーション療法料(以下(13)において「疾患別リハビリテーション料等」という。)を算定した場合は、1日2時間を超えない範囲でその時間を含んでよい。)勤務した日に限り、患者1人につき入院した日から起算して14日を限度に算定できる。


(以下略)


 ADL=日常生活活動であり、日常生活機能としているのは間違いである。ADL維持向上等体制加算の算定要件に関しては、専従又は専任を含む常勤理学療法士等5名以内の登録があれば、その常勤理学療法士等が勤務した時に限って算定できることになった。今までは専従理学療法士等が勤務していないと算定できないと判断されかねない文章だった。土・日・祝日等の算定を確実に行うことができるように厳密な規定としたと推測する。このことにより、急性期病棟でも365日リハビリテーション提供体制整備が進む可能性がある。


 なお、ADL維持向上等体制加算の施設基準に係る届出書添付書類は以下のとおりになっている。