高度急性期・急性期におけるADL維持向上等体制加算のメリット

 急性期病棟におけるリハビリテーション専門職の配置に対する評価として、ADL維持向上等体制加算 25点 (患者1人1日につき)が導入された。平成26年度診療報酬改定説明会(平成26年3月5日開催)資料等についてにある平成26年度診療報酬改定説明(医科・本体) の109〜110ページにその説明がある。高度急性期・急性期病院と専従療法士の兼務が可能な地域包括ケア病棟入院医療管理料算定病棟とでは、療法士の働き方に大きな違いがでることが想定される。本エントリーでは、前者について記載する。

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 答申時には、ADL 維持向上等体制加算を算定している患者について、疾患別リハビリテーション等を算定できない、との記載があった。平成26年度診療報酬改定関係資料 III-1 通知 の32/1,573ページでは、次のような記載となっている。


 専従療法士要件に関しては、通知の703〜704ページに次のように記述されている。

  • 当該病棟に、専従の常勤理学療法士、常勤作業療法士又は常勤言語聴覚士(以下「理学療法士等」という。)が1名以上配置されていること。なお、複数の病棟において当該加算の届出を行う場合には、病棟ごとにそれぞれ専従の理学療法士等が配置されていること。また、当該理学療法士等は、疾患別リハビリテーション等を担当する専従者との兼務はできないものであること。
  • ただし、当該病棟内に区分番号「A308-3」に規定する地域包括ケア入院医療管理料1又は2を算定する病室がある場合には、当該病室における理学療法士等の業務について兼務しても差し支えない。


 必要があって、疾患別リハビリテーション料等を行なった場合には、ADL 維持向上等体制加算を算定しなければよいということになる。専従療法士は、疾患別リハビリテーション料等を担当する専従者との兼務はできないとなっているが、これは回復期リハビリテーション病棟の専従要件と同一である。したがって、ADL 維持向上等体制加算専従療法士は、その病棟内であれば疾患別リハビリテーション料等を算定することは可能と私は判断する。最終的には、疑義解釈で確認することになると推測する。関連エントリーでは「期待はずれ」と表現したが、上記解釈に従うならば、高度急性期・急性期医療機関で本加算が一気に普及する可能性がある。


 ADL 維持向上等体制を算定するためには、通知の704ページにある以下の取組みが求められる。

  • ア 入院患者に対する定期的なADLの評価は、別紙様式●又はこれに準ずる様式を用いて行っていること。
  • イ 入院患者に対するADLの維持、向上等を目的とした指導を行っていること。
  • ウ 必要最小限の抑制とした上で、転倒転落を防止する対策を行っていること。
  • エ 必要に応じて患者の家族に対して、患者の状況を情報提供していること。
  • オ 入院患者のADLの維持、向上等に係るカンファレンスが定期的に開催されており、医師、看護師及び必要に応じてその他の職種が参加していること。
  • カ 指導内容等について、診療録に記載すること。


 別紙様式●は、通知の909/1,573ページにあるが、BI(Barthel Index)のことである。


 いずれも、リハビリテーション医療関係者にとってはさほど難しいものではないが、受入れ側の病棟医師・看護師の意識改革が必要となる。


 医師要件は、通知の704/1,573ページにある。なお研修要件は平成27年4月1日より適用される。


 リハビリテーション科専門医は研修対象からはずしても良いとは思うのだが、おそらく受講しなければいけない。リハビリテーション医学会が主催する研修会の講師となる先生はかなり忙しくなる。


 対象者要件、アウトカム要件は、通知の704〜705/1,573ページにある。届け出書類は、通知の1067〜1,068/1,573ページにある。

  • (4) 当該病棟の直近1年間の新規入院患者のうち、65歳以上の患者が8割以上、又は、循環器系、新生物、消化器系、運動器系若しくは呼吸器系の疾患の患者が6割以上であること。
  • (5) アウトカム評価として、以下の基準をすべて満たすこと。
    • ア 直近1年間に、当該病棟を退院又は転棟した患者(死亡退院を除く。)のうち、退院又は転棟時におけるADLが入院時と比較して低下した患者(別紙様式●の合計得点が低下した者をいう。)の割合が3%未満であること。
    • なお、患者のADLは、基本的日常生活活動度(Barthel Index、以下「BI」という。)を用いて評価することとするが、平成27年3月31日までの間に限り、DPCにおける入院時又は退院時のADLスコアを用いた評価であっても差し支えない。
    • イ 当該病棟の入院患者のうち、院内で発生した褥瘡(DESIGN-R分類d2以上とする。以下この項において同じ)を保有している入院患者の割合が1.5%未満であること。なお、その割合は、次の(イ)に掲げる数を(ロ)に掲げる数で除して算出する。
      • (イ) 届出時の直近月の初日(以下この項において、「調査日」という)に褥瘡を保有する患者数のうち、入院時既に褥瘡保有が記録された患者を除いた患者数
      • (ロ) 調査日の入院患者数(調査日の入院又は予定入院患者は含めず、退院又は退院予定患者は含める)
    • なお、届出以降、毎年7月1日に院内で発生した褥瘡を保有している入院患者の割合を調査する。


 ほぼ全員が疾患別リハビリテーション料を算定するような病棟、例えば、脳卒中病棟や整形外科病棟では、ADL維持向上等体制加算を算定するメリットはあまりない。一方、高齢者が多いがほとんどリハビリテーションが行なわれていなかった病棟ではリハビリテーション専門職を配置するインセンティブが働く。廃用症候群算定制限という頭の痛い問題はあるが、リハビリテーション科専門医がおり、専従療法士が多い高度急性期・急性期病院では、必要な病棟に専従療法士を配置するという流れができるのではないかと予想する。