急性期病棟におけるリハビリテーション専門職配置の件

 引き続き、2014年度診療報酬改定の検討を続ける。今回は、急性期病棟におけるリハビリテーション専門職配置の件を取り上げる。中央社会保険医療協議会 総会(第270回) 議事次第内にある、個別改定項目について(その1)総−4(PDF:2,099KB)、重点課題1-5、急性期病棟におけるリハビリテーション専門職の配置に対する評価(124〜125ページ)より、引用する。

第1 基本的な考え方
 急性期病棟に入院している患者について、ADL の低下が一部にみられることから、急性期病棟におけるリハビリテーション専門職の配置等についての評価を新設する。


第2 具体的な内容
 一般病棟入院基本料、特定機能病院入院基本料(一般病棟)または専門病院入院基本料の 7対 1 病棟、10 対1病棟について、理学療法士作業療法士又は言語聴覚士を配置した場合の加算を新設する。また算定にあたって、ADL に関するアウトカム評価を要件とする。
 (新) ADL 維持向上等体制加算 ○点(1日につき、14 日を限度)
 ※ 当該加算を算定している患者について、疾患別リハビリテーション等を算定できない。


[施設基準]
1)当該病棟に専従の理学療法士作業療法士又は言語聴覚士を○名以上の常勤配置を行うこと
2)当該保険医療機関において、リハビリテーション医療に関する○年以上の臨床経験及びリハビリテーション医療に係る研修を修了した常勤医師が○名以上勤務していること
3)当該病棟の直近1年間の新規入院患者のうち、65歳以上の患者が○割以上、又は循環器系の疾患、新生物、消化器系、運動器系または呼吸器系の疾患の患者が ○割以上であること
4)アウトカム評価として、以下のいずれも満たすこと。

  • ア) 直近 1年間において、当該病棟を退院した患者のうち、入院時よりも退院時に ADL の低下した者の割合が ○%未満であること。
  • イ) 当該病棟の入院患者のうち、院内で発生した褥瘡を保有している入院患者の割合が○%未満であること。


 本改定の関係資料が、中央社会保険医療協議会 総会(第262回) 議事次第内にある、個別事項(その3:リハビリテーション)について、総−1(PDF:2,479KB)の7〜18ページにある。次のような記載がある。

  • 入院中にADLが低下した患者は、7対1病院で約3.7%、10対1病院で約4.1%存在する。
  • 入院時にADLが自立している患者の場合、在院日数が長いほど退院時にADLが低下している値が大きい。また、65歳以上の患者の方がADLの変化が大きい。
  • 早期からのリハビリテーションによりADLが改善する報告や、理学療法士の病棟配置により、入院患者のADLの向上、入院日数の短縮につながったという報告があるが、専従理学療法士の病棟配置状況は、7対1病棟で2.1%、10対1病棟で6.1%にとどまっている。
  • 理学療法士を2名以上配置している病棟は、「循環器系の疾患」、「新生物」、「消化器系の疾患」、「損傷、中毒及びその他の外因の影響」、「筋骨格系及び結合組織の疾患」、「呼吸器系の疾患」の患者を多くみている病棟が多い。


 理学療法士の配置における効果の実例として、広島大学の実績(出典:平田,他 国立大学法人リハビリテーションコ・メディカル学術大会誌31,20-22,2010 -日本理学療法士協会提供資料-)が使用されている。


 中医協資料を読み解くと、施設基準となるリハビリテーション専門職配置数は2名ではないかと予想する。また、ADL 維持向上等体制加算がついている患者については、疾患別リハビリテーション料がとれないことを考えると、加算点数は脳血管疾患等リハビリテーション料1(245点)+早期リハビリテーション加算(75点)=320点前後になるのではないかと推測する。早期リハビリテーションが比較的普及している脳血管疾患や運動器疾患患者が入っている病棟だけでなく、循環器系、新生物、消化器系、呼吸器系疾患患者が多い病棟への療法士配置に関するインセンティブが働く診療報酬になって欲しいと願う。