廃用症候群でのリハビリテーション処方が困難に

 2014年度診療報酬における改定内容の一部が明らかになった。中央社会保険医療協議会 総会(第270回)(平成26年1月29日)内にある、個別改定項目について(その1)総−4(PDF:2,099KB)が該当資料である。
 リハビリテーション医療に関係するものがいくつかあるが、その中で最も大きな影響力を与えると予想されるのが、「廃用症候群に対するリハビリテーションを含む疾患別リハビリテーション等の適切な評価(130ページ)」である。

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 「疾患別リハビリテーション等の適切な評価」より、重要部分を抜粋する。

第1 基本的な考え方
 廃用症候群に対するリハビリテーションを適正化の観点から見直しを行い、併せて疾患別リハビリテーション等の評価を見直す。


第2 具体的な内容
1.廃用症候群に対するリハビリテーションの評価を適正化するとともに、対象患者から他の疾患別リハビリテーション等の対象患者を除く。

  • (改定案)[対象者] 外科手術又は肺炎等の治療時の安静による廃用症候群その他のリハビリテーションを要する状態の患者であって、一定程度以上の基本動作能力、応用動作能力、言語聴覚能力及び日常生活能力の低下を来しているもの(心大血管疾患リハビリテーション料、運動器リハビリテーション料、呼吸器リハビリテーション料、障害児(者)リハビリテーション料、がん患者リハビリテーション料の対象となる患者を除く。)


2.疾患別リハビリテーション等の評価を充実する。


 厚労省用語で、「適正化」というのは引き下げを意味する。一方、「充実」は概ね引き上げとなる。
 廃用症候群は、診療報酬が引き下げられるばかりでなく、対象がきわめて限定される。関連エントリーで取り上げた中医協調査結果をみると、手術後患者でいうと、入院の28.8%、外来の38.4%が心大血管疾患、運動器、呼吸器疾患となっている。手術以外では、合計58.6%が筋骨格系、循環器系、呼吸器系となっている。加えて、今回は、障害児(者)リハビリテーション料、がん患者リハビリテーション料対象患者もターゲットにされた。手術後患者で廃用症候群対象となるのは、消化器系良性疾患の術後患者程度しか残らなくなる。
 大腿骨頚部骨折術後廃用症候群、肺炎後廃用症候群心不全廃用症候群、胃癌術後廃用症候群などの病名は、今後許されなくなる。運動器や呼吸器のような基準が緩いリハビリテーション料はまだ良い。心大血管疾患やがん患者リハビリテーション料は施設基準が高く、算定している医療機関が少ない。中央社会保険医療協議会 総会 (第248回) 議事次第(平成25年9月4日)内にある総−3−1(PDF:227KB)の14〜15ページをみると、平成24年度で、心大血管疾患リハビリテーション料(I)は581施設、(II)が64施設、がん患者リハビリテーション料446施設に過ぎない。このような状況で、心大血管疾患やがん患者リハビリテーション料算定対象疾患患者がリハビリテーション医療を必要になった時、どこでリハビリテーション医療を提供できるのかが疑問である。
 廃用症候群の規制強化を図るという名目で行われた診療報酬改定のために、循環器疾患やがん疾患患者がリハビリテーション医療を受ける機会が損なわれることがあってはならない。きわめて憂慮すべき事態である。