http://www.asahi.com/articles/ASG1D5JJ3G1DULFA00B.htmlで、お泊まりデイサービスの問題が取り上げられた。Webにアップされたのは1面トップになった部分であるが、2面にもかなりの分量の記事がある。概要は以下のとおりである。
- 通称「お泊まりデイ」が増加
- 「お泊まりデイ」とは、昼に利用しているデイサービス事業所に、夜も泊まり続けるものである。
- デイサービス事業所1万ヶ所に聞いたアンケート(1,576事業所が回答)では、8.3%が「宿泊サービス」を提供していた。全国には約3万7千ヶ所のデイサービスがあり、1割近い3千ヶ所ほどが「お泊まりデイ」をしている可能性がある。
- 「劣悪介護」の危惧
- 「お泊まりデイ」提供側の声
- 「どこにも受け入れてもらえない老人がいるし、家族の負担も重い。現実は社会保障制度のはざまにいる人が多数派だ」。デイサービス大手「茶話本舗(さわほんぽ)」を運営する日本介護福祉グループ(本社・東京)の藤田英明会長は言い切る。
- 罰則がなく、お泊まりデイサービス協会(加盟73社)の斉藤正行副会長は「基準を守る努力はしているが、引き受けなければ行き場がない高齢者がいる場合は違反覚悟で引き受けることもある」と言う。
- 「お泊まりデイ」は昼の客を確保するための付録として効果がある。
調べてみると、http://www.nhk.or.jp/ohayou/marugoto/2012/12/1207.htmlや賛否両論の「お泊まりデイサービス」 厚労省の狙いは規制強化か | オリジナル | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準、第11回 お泊まりデイはどこにいくのか 基準該当サービスとして制度化検討を « ふくしの樹が見つかった。いずれも、批判的な論調となっている。お泊まりデイサービス業界も自主規制の必要制を感じ、2013年8月28日にhttp://www.otomariday.comを設立している。
厚生労働省も手をこまねいて見ていた訳ではない。平成23年度デイサービス利用者の宿泊ニーズ等に関する調査事業(モデル事業)の結果について を行っており、自治体、事業者双方から意見を聞いている。そのなかでは、「ショートステイや小規模多機能型居宅介護の整備を進めるべきであり、早急に基準を設け、かつ、介護保険を適用するにせよ、緊急・短期間のサービスであることを強調していくことが必要である」といった趣旨の意見が出ている。
一方、1980年代から、宅老所やグループホームを先駆的に行ってきたhttp://www.clc-japan.com/takurousyo_net/index.htmlは、2010年10月19日、「宿泊付デイサービス(仮称)」の制度化及び有料老人ホーム」についての要望書を提出し、その中で夜間帯の支援(泊まり)について、次のような経過を述べている。
夜間帯の支援(泊まり)は自主事業として継続して、お年より本人と介護する家族の状況に合わせた支援を行ってきました。それは、自宅や地域に暮らし続けるためには、お年より本人を支えるだけでは不十分で、介護する家族も併せて支えていくことが最も重要だからです。
当院周辺にも、「お泊まりデイ」を提供している事業所が増えている。退院先がなかなか見つからない患者を快く受けいれてくれ、かつ、退院後も医療機関との連携を意識して行い、質が保たれているという印象を持っていた。宅老所と同じように、使命感が高い職員が自己犠牲精神で事業を行っているのではないかと考えていた。
しかし、今回、いろいろと調べているうちに、「お泊まりデイ」事業業者に対するイメージが大きく変わった。朝日新聞に載っている茶話本舗 | デイサービスのパイオニア 株式会社JC-Group、デイサービスなら介護施設[だんらんの家]フランチャイズオーナーも募集中、斉藤正行副会長が代表をつとめるhttp://jcvcg.com/com/のいずれを見ても気づくのは、「フランチャイズ」という言葉である。フランチャイズ加盟店運営者は労働者ではなく、労働基準法が適用されない。昼間、デイサービスで仕事をした後お泊まりをしても問題がない。拡大すればするほど本部の方に入るロイヤルティーが増え、利益があがる。一方、加盟事業所は、無理な労働形態で職員にしわ寄せをするか、利用者に劣悪な環境を我慢してもらうかが迫られる。
コンビニエンスストアなどと同じ形態で介護事業が行われていることに強い違和感を感じる。現在の「お泊まりデイ」事業所は、宅老所の流れを組む助け合い運動というよりは、介護事業の不備をついた営利業者が活躍する場となっている。今後、都市部を中心に高齢者が急増し*1、高齢者の住まいの問題は深刻になる。避けては通れない課題として、直視する必要がある。