医療機能分化の促進と専門医制度改革

 現在、医療の将来像を決定づける2つの重要な制度改革が進められている。医療機能の分化促進と、専門医制度改革である。

 中央社会保険医療協議会 総会(第261回) 議事次第の資料、入院医療(その5)【続き】総−2(PDF:6,469KB)の7ページに、下図が示されている。


 左のようなワイングラス型の入院医療を、右のような砲弾型(ヤクルト型という人もいる)の分布に変更することが目指されている。急性期医療を担ってきた7対1看護病床約38万床のうち、高度急性期病床に移行できるのは約18万床となる。絞り込みから外れた病床は、一般急性期、亜急性期等を選択せざるをえなくなる。


 もうひとつの重要課題、専門医制度改革に関して、専門医の在り方に関する検討会 報告書 |厚生労働省が出されている。ポイントは2点、中立的な第三者機関を設立し、専門医の認定と養成プログラムの評価・認定を統一的に行うことと、「総合診療専門医」を基本領域の専門医の一つとして加えることである。


 この2つの制度改革から見えてくる厚労省の考える将来的な医療制度は、概ね次のようなものとなる。

  • 高度急性期病床は、大規模医療機関に限定する。機能分化した専門医が多数働き、看護師などのコメディカルスタッフも集中させ、平均在院日数を短縮させる。
  • 中小病院や診療所は、一般急性期、亜急性期等、療養病棟などを担当する。医師の専門性として、新たに総合診療科を位置づける。


 新しい専門医制度は2017年から始まる。2015年に卒業し、初期研修を開始する現在の医学部5年生が対象となる。基本領域19学会においては、プログラム整備が急ピッチで行われている。
 日本内科学会では、2013年11月13日付で、新・内科専門医制度に向けてというパンフレットをホームページに公開している。認定内科医(3年研修)を新・内科専門医(5年研修)に移行する。総合診療科とのダブルボードも検討することになっている。
 総合診療科育成の母体となる日本プライマリ・ケア連合学会も、2013年11月16日付で一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会専門医・認定医認定制度要綱を出している。


 中小病院が主体となる医療団体の幹部は、今後は新・内科専門医と総合診療科育成に力を入れると述べていた。私も概ね同意はしたが、そこにリハビリテーション専門医の育成も付け加えて欲しいと要望した。何故ならば、入院医療機能の分化が促進されると、リハビリテーション医療の重要性が必然的に高まるからである。しかし、残念ながら、中央社会保険医療協議会 総会(第261回) 議事次第の資料、平成24年度診療報酬改定結果検証に係る調査(平成25年度調査)について(病院勤務医、リハビリテーション総−4−2(PDF:1,631KB)の69ページを見ても、回復期リハビリテーション病棟でさえリハビリテーション専門医の配置は平均0.4人に過ぎない。
 リハビリテーション科専門医のハードルが高すぎるとも言われたが、資格・制度 | 公益社団法人 日本リハビリテーション医学会を見てもわかるが、認定臨床医という制度もある。認定臨床医制度とは、「リハビリテーション医療の一定以上の臨床経験を有する医師を認定するもの」であり、整形外科や脳神経外科の専門医を持っている医師を主な対象としている。認定要件は意外に緩やかであり、下記のようになっている。

認定臨床医の認定に関する内規より


第2条 認定臨床医として認定を受けられるものは、次の(1)、(2)及び(3)の規定を満たし、第4条に定める学会の行う試験に合格したものに限る。
(1)医師免許取得後5年以上及び学会加入後3年以上経過していること
(2)以下のいずれかの研修を行ったものであること
1)本医学会が認定した研修施設において1年以上の研修を修了したもの
2)別に定める指定の教育研修会を受講の上、指導責任者の推薦書を得たもの
(3)自らリハビリテーション医療を担当した10症例の臨床経過を各症例毎にまとめること


 自分の勤める病院から離れられない医師でも、研修会カレンダー | 公益社団法人 日本リハビリテーション医学会に示すような教育研修会を受けることによって、認定臨床医の資格をとることができる。
 中小病院に働く医師の専門性は、今後、新・内科専門医、総合診療科医、そして、リハビリテーション科医となることが最も適当だと私は思っている。新・内科専門医は、臓器別に分化した医療から離れ総合的な内科医療に従事する医師が想定される。総合診療科医は、総合性を専門性とする医師が担う。できれば、リハビリテーション科専門医が良いが、最低でも勉強してリハビリテーション科認定・臨床医となった医師が、亜急性期・回復期から生活期のリハビリテーションを担当する。
 新・専門医制度において、中小病院の果たすべき役割は、上記内容に集約されるのではないかと私は考えている。