高齢者のうち日常生活活動に影響ある者は約2割

 高齢社会を考えるうえで覚えておきたい数値がある。それは、65歳以上の高齢者のうち日常生活活動に影響ある者は約2割、日常生活活動(ADL)に支障がある者は約1割、ということである。

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 第1章 第2節 3 高齢者の健康・福祉|平成24年版高齢社会白書(全体版) - 内閣府をみると、次のような記述がある。

 65歳以上の高齢者の健康状態についてみると、平成22(2010)年における有訴者率(人口1,000人当たりの「ここ数日、病気やけが等で自覚症状のある者(入院者を除く)」の数)は471.1と半数近くの人が何らかの自覚症状を訴えている。
 一方、65歳以上の高齢者の日常生活に影響のある者率(人口1,000人当たりの「現在、健康上の問題で、日常生活動作、外出、仕事、家事、学業、運動等に影響のある者(入院者を除く)」の数)は、22(2010)年において209.0と、有訴者率と比べると半分以下になっている。これを年齢階級別、男女別にみると、年齢層が高いほど上昇し、また、70歳代後半以降の年齢層において女性が男性を上回っている。
 この日常生活への影響を内容別にみると、高齢者では、「日常生活動作」(起床、衣服着脱、食事、入浴など)が人口1,000人当たり100.6、「外出」が同90.5と高くなっており、次いで「仕事・家事・学業」が同79.6、「運動(スポーツを含む)」が同64.5となっている。


 なお、本調査の結果は、平成22年国民生活基礎調査の概況|厚生労働省に基づいている。グラフでみる世帯の状況(平成24年)(平成22年国民生活基礎調査の結果に基づき、わが国の世帯及び世帯員の状況をグラフ化してまとめたもの。)も参考となる。


 一方、第1章 第2節 3 (2)高齢者の介護|平成24年版高齢社会白書(全体版) - 内閣府の方を見ると、65歳以上の第1号保険者の16%ほどが要介護(要支援)認定を受けていることがわかる。

 介護保険制度における要介護者又は要支援者と認定された人(以下「要介護者等」という。)は、平成21(2009)年度末で484.6万人となっており、13(2001)年度末から186.3万人増加している。そのうち、65歳以上の人の数についてみると、21(2009)年度末で469.6万人となっており、13(2001)年度末から181.9万人増加しており、第1号被保険者の16.2%を占めている。
 また、65〜74歳と75歳以上の被保険者について、それぞれ要支援、要介護の認定を受けた人の割合をみると、65〜74歳で要支援の認定を受けた人は1.2%、要介護の認定を受けた人が3.0%であるのに対して、75歳以上では要支援の認定を受けた人は7.5%、要介護の認定を受けた人は21.9%となっており、75歳以上になると要介護の認定を受ける人の割合が大きく上昇する。
 60歳以上の高齢者に日常生活における介助等の必要度について、韓国、アメリカ、ドイツ及びスウェーデンの4か国と比較すると、日本は「まったく不自由なく過ごせる」と回答した人の割合が約9割で最も高い結果となっている。また、日本の状況を5年前(平成17(2005)年)と比較すると、「全く不自由なく過ごせる」と回答した人の割合が4.8ポイント上昇している。


 地域在住高齢者2,591名を対象に実施された研究である、CiNii 論文 -  拡大ADL尺度による機能的状態の評価 : (1)地域高齢者の、表3拡大ADL尺度15項目の通過率とその順位および項目間相関係数、を見ると次のような結果が示されている。

1.食事 97.4%
2.トイレ動作 96.6%
3.歩行 95.49%
4.整容 95.45%
5.更衣 95.24%
6.移乗 95.16%
7.入浴 94.8%
8.階段昇降 90.9%
9.日用品の買い物 86.6%
10.食事の用意 85.7%
11.預貯金の出し入れ 80.8%
12.バスや電車で外出 56.1%

 Barthel Indexの項目で最も通過率が悪いのが階段昇降で約9割、IADLの項目で低いのは預貯金の出し入れの80.8%となる。なお、バスや電車で外出56.1%と低いのは、調査対象地域が宮城県涌谷町であり、公共交通機関を利用して外出する習慣がない地域だからである。


 これまでお示ししたデータをみると、65歳以上の高齢者のうち日常生活活動に影響ある者は約2割、日常生活活動(ADL)に支障がある者は約1割という値は概ね妥当であることがわかる。この数値をもとに、二次医療圏レベルのおおまかな介護需要増加を計算することができる。
 高齢化率はあがるが高齢者実数は大きく変わらない過疎地域では、介護需要はさほど伸びない。むしろ、現時点で不足しているサービスを如何に充足するかが問題となる。
 一方、高齢者が急増する都市部では全く違う対策が求められる。例えば、札幌医療圏では、65歳以上の高齢者が482,480人(2010年)から688,293人(2025年)へと、205,813人も増加すると想定されている。同様に、仙台医療圏では、284,772人から398,010人へと113,238人増となると予測されている。都市部では、高齢者増加分だけで10万人あたり約2万人の要介護(要支援)者が増えることになる。団塊の世代が75歳以上になる2025年以降は、介護が必要な者の比率は高まり、より深刻な事態となることが見込まれる。
 日本の場合には欧米各国と比べると、元気な高齢者も多いことも事実である。就労可能期間を延長するなど積極的な社会参加を行い、要介護状態を防ぐという取組みも重要となる。ちなみに、まもなく定年を迎える当法人理事長にも、いつまでもお元気でいて欲しいのでずっと診療支援をしていただきたいというお願いをしており、返事待ちの状態である。