結核医療に係る地域連携会議

 先日、「結核医療に係る地域連携会議」に参加してきた。
 平成22年結核登録者情報調査年報集計結果(概況)|厚生労働省と比べてみると、宮城県は次のような特徴がある。

  • (全国)新登録結核患者数 23,261人 罹患率(人口10万人対の新登録結核患者数) 18.2 (対前年比0.8減)
  • (宮城)新登録結核患者数 265人、罹患率 11.3(全国下位第4位)
  • (全国)70歳以上の新登録患者の占める割合 47.0(H18) から 51.2(H22)へ増加。過去5年の罹患率における減少:70歳代は50.0(H18)から38.8(H22)、80歳代は92.0(H18)から82.6(H22)、90歳以上は97.9(H18)から91.8(H22)へ減少。
  • (宮城)同様の傾向がある。


 宮城県における2010年1月1日〜2011年12月末日までの入院患者についての調査を行ったところ、次のようなことがわかった。

  • 入院時に全体の31.0%が要介護状態だった。
  • 糖尿病、担癌状態(肺癌除く)、自己免疫疾患(関節リウマチ等)、慢性腎疾患(透析含む)、精神疾患、眼疾患などの併存疾患を認めた。その他、腸閉塞などの消化器疾患や、転倒・骨折などの整形外科疾患、経口摂取困難などがみられ、県内唯一の結核医療機関である宮城県立循環器呼吸器病センターでの治療が困難だった。
  • 宮城県立循環器呼吸器病センターでの平均入院期間は73.3日であり、地域の病院に主に通院で治療継続されていた。
  • 以上より、併存疾患の診療をどうするか、退院後の医療についてどうするか(地域連携パス作成、保健所・保健師との連携)、疑い症例に対する診断などの問題について、適切な連携をとる必要があることがわかった。


 さらに、意見交換のなかで、次のような実態があることが出された。

  • 長期療養施設からの紹介患者は、退院させることができない。
  • 大腿骨頚部骨折などで整形外科単科の病院から紹介された時も、元の医療機関に戻せない。リハビリテーション機能はなく、寝かせきりにするしかない。
  • 結核になったことで、ホームレスなど社会的入院だった患者がこれ幸いと送られてくる。
  • 医療関係者の中にも、結核に対する恐怖心がある。
  • 再燃を防ぐためにも治療を完遂することが必要だが、十分な知識が地域医療機関にない。


 結核に関しては、2011年5月16日付で、「結核に関する特定感染症予防指針」の一部改正が通知されている*1。この中でも、結核発症の危険が高い高齢者、基礎疾患保有者、ホームレス、外国籍(高蔓延国出身者)などハイリスクグループへの対策が重要であることが繰り返し強調されている。
 合併症が重症あるいは専門的高度医療又は特殊医療を必要とする場合、合併症が結核の進展を促進しやすい病状にある場合、入院を要する精神障害者である場合、一般病床や精神病床を対象に「結核患者収容モデル事業」が行われている。しかし、このモデル事業も有効に機能しているとは言いがたい*2
 当院もモデル事業の対象施設になっており、陰圧室1床持っているが、結核疑いの患者を診断確定まで入院させることに使う程度で治療は行っていない。結核は治ったが、治療の過程で要介護状態が悪化したとなれば、問題である。結核患者の高齢化、要介護者増加ということを考慮した場合、リハビリテーション機能が高い当院のような医療機関でも結核治療の一部を担う必要があるのではないかという感想を持った。地域連携システムをどのように構築するかという課題はあるが、約2ヶ月強の入院期間の後半部分に関しては、結核治療を行いながら当院でリハビリテーションも並行して行うという方法を健闘して良いのではないかと考えた。いずれにせよ、結核に関し、院内で学習会を行うことが先決である。幸いにも、「結核医療に係る地域連携会議」のまとめ役をしている医師が、当院に非常勤で来ていただいている。今度、お願いしてみようと思う。