宮城県の震災関連死数公表

 宮城県の震災関連死数が公表され、総死亡者数が1万人を超えたことが明らかになった。

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 宮城県は21日、東日本大震災後の体調悪化による死亡や、震災を苦にした自殺など「震災関連死」の人数を初めて公表した。15日時点の関連死は22市町で計619人。市町別の内訳は石巻市が最多の179人。次いで仙台市143人▽気仙沼市79人▽東松島市54人。


 関連死を含めた県内の死者数は1万149人と、1万人を超えた。年齢層では65歳以上の高齢者が5570人で54.9%を占めた。


 震災関連死は、災害弔慰金の支給審査会で「震災との関連で死亡した」と認定された場合で、遺体の確認などで死亡を確認した「直接死」は除く。

http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20120322k0000m040070000c.html


 元になったのは、http://www.pref.miyagi.jp/kikitaisaku/higasinihondaisinsai/higaizyoukyou.htmの3月21日公表資料、変更点17時である。市町村ごとの表を見ると、直接死や行方不明が多い自治体で関連死も多いという関係がわかる。調査中というところを除いても、重傷者は499名に及ぶ。人的被害はきわめて大きい。なお、関連死の内訳は宮城県の資料では明らかにされていない。


 東日本大震災後に心不全が有意に増加、ACS、脳卒中も:日経メディカルに興味深いデータが報告されていたので、あわせて紹介する。東北大学循環器内科学の下川宏明教授らが、宮城県全域の救急車搬送の解析で、心不全ACS(急性心筋梗塞狭心症)、脳卒中脳出血脳梗塞)、心肺停止、肺炎の症例を調べたものである。(注:原文では「心配停止」となっているが、明らかな誤植であり、「心肺停止」と書き直した。)

 解析ではまず、各年ごとに2月11日〜3月10日と3月11日〜4月7日の2期間で各疾患の発生数を比較した。その結果、2011年だけが、3月11日〜4月7日の期間の方が2月11日〜3月10日の期間より、心不全ACS脳卒中、心肺停止、肺炎のすべてが有意に多かった。例えば心不全は、2011年の2月11日〜3月10日では123件だったが、同年3月11日〜4月7日には220件と有意に増加していた(P<0.001)。また、2008〜2010年の各年の3月11日〜4月7日の発生数は、それぞれ101件、100件、126件であり、2011年の方が有意に高かった(P<0.001)。


 次に、2011年の2月11日以降、4週間ごとの週間平均発生数を追ったところ、心不全は30.8件、55.0件、35.0件、31.0件、29.3件と推移していた。同様にACSは8.25件、19.0件、9.25件、5.0件、10.0件、脳卒中は70.8件、96.5件、82.0件、73.5件、62.5件、心肺停止は49.0件、61.8件、46.0件、42.3件、40.3件、肺炎は46.5件、89.3件、60.5件、45.5件、47.5件とそれそれ推移していた。

 着目点の1つである沿岸部と内陸部の比較では、沿岸部の内陸部に対するオッズ比を調べたところ、肺炎で1.54(95%信頼区間:1.06-2.26)となり、沿岸部での肺炎の患者が有意に多いことも分かった(P=0.023)。


 このほか、デバイス植え込み患者および冠攣縮性狭心症患者を対象とした検討では、不整脈(特に心室性)の増加が見られ、心臓再同期療法(CRT)治療の効果の減弱や冠攣縮の増悪の可能性なども明らかになった。


 下川教授がとりあげたような心血管系イベントや肺炎などの感染症が、震災関連死の原因だったのではないかと推測する。被害の甚大さを考慮すると、災害弔慰金という制度自体を知らなかったために認定からもれた方々もいるのではないかと予想する。
 うつ病PTSDなどの精神疾患を契機として生じる自殺、アルコール関連疾患の増加も危惧される。不自由な生活をおくっている被災者の健康被害を軽減するために、生活基盤の再建や医療介護の充実などの対策を強化することが求められている。