2012年度診療報酬改定答申 回復期リハビリテーション病棟入院料

 昨日、中央社会保険医療協議会 総会 (第221回) 平成24年2月10日(金)にて、診療報酬改定答申が明らかにされた。リハビリテーションに関する資料をチェックする。
 まずは、回復期リハビリテーション病棟入院料について。なお、本エントリーの内容は、診療報酬改定、回復期リハビリテーションの3段階化(2012年1月30日)を答申内容をもとに改変したものである。


 答申について、資料(総−1)(PDF:1331KB)の151〜153ページに次のような記載がある。

第2 具体的な内容
1.回復期リハビリテーション病棟入院料について新たな評価を創設する。

1 回復期リハビリテーション病棟入院料1 1,900点(新)
2 回復期リハビリテーション病棟入院料2 1,750点(改)
3 回復期リハビリテーション病棟入院料3 1,600点


2.また、重症患者回復病棟加算については多くの医療機関で算定されていることから、入院料に包括して評価を行う。


 なお、 別紙1−1(医科診療報酬点数表)(PDF:1879KB)、医科-入院料等-69/89のページにある、A308 回復期リハビリテーション 病棟入院料(1日につき)をみると、次のようになっている。

1 回復期リハビリテーション病棟入院料1 1,911
2 回復期リハビリテーション病棟入院料2 1,761点
3 回復期リハビリテーション病棟入院料3 1,611点


 この+11点分に関しては、資料(総−1)(PDF:1331KB)の203〜205ページに次のような説明がある。

 栄養管理実施加算、褥瘡患者管理加算について、入院基本料、特定入院料で包括して評価することから、入院基本料、特定入院料の評価をそれぞれ 11 点ずつ引き上げる。


 栄養管理実施加算(1日につき) 12点が削除されていること、褥瘡患者管理加算(入院中1回) 20点が削除されていることを考慮すると、わずかながらマイナス改定となっている。


 まず、回復期リハビリテーション病棟入院料2(これまでの回復期リハビリテーション入院料1)について確認をする。

【回復期リハビリテーション病棟入院料2】
1) 常時15対1以上の看護配置があること
2) 常時30対1以上の看護補助者の配置があること
3) リハビリテーション科の医師、理学療法士作業療法士言語聴覚士が適切に配置されていること。
4) 在宅復帰率6割以上であること
5) 新規入院患者のうち2割以上が重症の患者であること
6) 重症の患者の3割以上が退院時に日常生活機能が改善していること
【重症患者回復病棟加算】(1日につき) 50点 ⇒ 削除

 重症患者回復病棟加算が削除され、入院料に包括されたこと以外、変更点はない。したがって、新しい点数は重症患者回復病棟加算分を考えると、1770点から1750点と20点減額されている。


 次に、回復期リハビリテーション病棟入院料1の基準をみる。

【回復期リハビリテーション病棟入院料1】
[施設基準]
1) 常時13対1以上の看護配置があること。(看護師7割以上、夜勤看護職員2名以上)
2) 常時30対1以上の看護補助者の配置があること。
3) 専任のリハビリテーション科の医師1名以上、専従の理学療法士3名以上、作業療法士2名以上、言語聴覚士1名以上、専任の在宅復帰支援を担当する社会福祉士等1名以上の配置があること。
4) 在宅復帰率が7割以上であること。
5) 新規入院患者のうち3割以上が重症の患者(日常生活機能評価で10点以上の患者)であること。
6) 新規入院患者のうち1割5分以上が「一般病棟用の重症度・看護必要度に係る評価表」のA項目が1点以上の患者であること。
7) 重症の患者の3割以上が退院時に日常生活機能が改善していること。

 まず、看護師基準が常時15対1以上から常時13対1以上となっている。看護師配置基準も4割以上から7割以上となっている。夜勤看護職員数は従来の1名以上から2名以上となっているところである。
 看護補助者数には変更がない。
 医師に関しては、従来からリハビリテーション科を標榜している専任の医師1名以上となっているので変わりはない。一方、専従療法士数は理学療法士2名以上及び作業療法士1名以上の常勤配置から、理学療法士3名以上、作業療法士2名以上、言語聴覚士1名以上と増加している。専任の在宅復帰支援を担当する社会福祉士等1名以上の配置は、新たな基準である。
 在宅復帰率は6割以上から7割以上に引き上げられている。
 重症患者率も2割以上から3割以上に基準が上がっている。
 「一般病棟用の重症度・看護必要度に係る評価表」のA項目が1点以上の基準については後述する。
 重症患者の割合は、重症患者回復病棟加算包括化に伴うものであり、内容は同じである。


 休日リハビリテーション提供加算やリハビリテーション充実加算を取得している施設は、療法士数が多い。当然のように、医療相談業務を担う社会福祉士がいる。したがって、看護職員数増、在宅復帰率、重症患者率が鍵を握ることになる。夜勤看護職員2名以上という基準は、病棟夜勤3交代制よりは2交代制の方がクリアしやすい。夜勤看護職員2名+看護補助者(介護福祉士)1名の3人夜勤+早番・遅番の充実といった体制が促進されるのではないかと予測する。


 「一般病棟用の重症度・看護必要度に係る評価表」の記載の手引きは、モニタリング及び処置等 - 日本看護協会にある。A項目は、1)創傷処置、2)血圧測定、3)時間尿測定、4)呼吸ケア、5)点滴ライン同時3本以上、6)心電図モニター、7)シリンジポンプの使用、8)輸血や血液製剤の使用、そして、9)専門的な治療・処置(抗悪性腫瘍剤の使用、麻薬注射等の使用、放射線治療免疫抑制剤の使用、昇圧剤の使用、抗不整脈剤の使用、ドレナージの管理)である。内容を見てみると、回復期リハビリテーション病棟で通常行っていると言えるのは、次の項目である。

  • 創傷処置: 褥瘡はNPUAP分類II度以上又はDESIGN分類d2以上のもの。縫合部の処置、縫合固定を伴うカテーテルの挿入部並びにカテーテル抜去後の縫合。気管切開口、胃瘻、ストーマ等、造設から抜糸もしくは滲出が見られなくなるまでの間の創傷に対する処置。
  • 呼吸ケア: 人工呼吸器管理、酸素吸入、気道内吸引、口腔内吸引、痰を出すための体位ドレナージ、スクウィージングのいずれかを実施した場合。

 血圧測定5回以上、時間尿測定3回以上、点滴ライン3本以上、心電図モニター、シリンジポンプ使用、輸血や血液製剤の使用、専門的な治療・処置を行っている患者は、通常は病状不安定と考え、回復期リハビリテーション病棟対象外である。


 簡単にまとめると、胃瘻造設も含め術後早期に回復期リハビリテーション病棟に移動できる場合、褥瘡がある場合、呼吸器疾患がある場合、嚥下障害重度の場合などが対象となる。日常生活機能評価=「ハイケアユニット用重症度・看護必要度に係る評価表」B項目10点以上と、「一般病棟用の重症度・看護必要度に係る評価表」A項目1点以上の病態はオーバーラップしている。今回の診療報酬改定以前より重症患者が多くとっていたところでは、基準はクリアできるのでないかと推測する。ただし、いずれの看護必要度も回復期リハビリテーション病棟の看護労働を踏まえた評価とはいえず、矛盾がいっそう拡大したことは間違いない。


 いずれにせよ、回復期リハビリテーション病棟入院料1の点数が、1720点→1900点(栄養管理実施加算等包括分を含め1,911点)と大幅な引き上げとなったことより、この基準をクリアしようと試みる病院が増加すると予測する。看護師争奪や患者選別の動きが強まらないかを危惧する。


 回復期リハビリテーション病棟入院料における包括範囲についても見直しが行われ、「在宅医療、J-038 人工腎臓」の2つが包括範囲から除外されている。人工腎臓が回復期リハビリテーション病棟でも実施できることは朗報である。人工透析をしながら運動療法をすることの治療効果も報告されている。透析中にリハビリテーションを行う医療機関が今後増加するのではないかと予測する。
  別紙1−1(医科診療報酬点数表)(PDF:1879KB)、医科-入院料等-70/89のページをよく見ると、感染防止対策加算、患者サポート体制充実加算も算定対象に加わっている。前者は、資料(総−1)(PDF:1331KB)の149〜150ページに、後者は同199ページに記載がある。