福島県土湯温泉で温泉発電事業開始

 福島県土湯温泉で、温泉発電事業が始まることになった。

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 湯遊つちゆ温泉協同組合(福島県福島市、理事長:渡邉久)、有限会社宝輪プラント工業(岩手県盛岡市、社長:浦川浩二)およびJFEエンジニアリング株式会社(本社:東京都千代田区、社長:岸本純幸)の申請者三者は、このたび、環境省より「平成23年再生可能エネルギー事業のための緊急検討委託業務(以下、本業務)」を受託し、福島県福島市土湯温泉町における温泉バイナリー発電の事業化へ向けた調査業務に着手しました。


 土湯温泉では、東日本大震災原子力発電所事故の影響で地域経済を支える観光産業が大きな影響を受けており、早期復興による地域経済の活性化が急がれています。こうした中、地域復興と安心して住み続けられるまちづくりのために設立された土湯温泉町復興再生協議会(会長:加藤勝一)は「土湯温泉町復興再生計画」を策定し推進しております。一方、環境省では、被災地において再生可能エネルギーの導入を加速し、地球温暖化に配慮した復興を目的として調査検討を実施しています。
 本業務は、その施策のひとつとして、温泉の未利用分の熱エネルギーを使う温泉発電を導入し、エネルギー地産地消のモデル地域づくりの実現を目指すものです。


 本業務においては、湯遊つちゆ温泉協同組合が所有する源泉から噴出する約150℃の温泉資源を利用し、環境負荷の低いバイナリー発電設備※を用いた発電事業を目指して、調査・調整を実施します。


 湯遊つちゆ温泉協同組合は、本業務の全体とりまとめ及び地域社会との調整を行います。有限会社宝輪プラント工業は、土湯温泉をはじめ各地の源泉坑井の建設・保守・管理に携わってきた知見を活かし、坑井利用計画および資源量調査を主導します。JFEエンジニアリング株式会社は、再生可能エネルギー分野における数多くの実績を活かし、温泉発電設備の設計・検討を担当します。
 三者は、本業務の成果を基に、概ね2年後に500kW級の発電事業の開始を目指します。また、将来的には1000kW級に拡大することで、土湯温泉の電力需要を全て賄える規模の発電事業の実現を目標としています。


 三者は、本業務を通じて、再生可能エネルギーを用いたまちづくりの先進事例を実現し、被災地の復興再生ならびに国内各地の地域活性化に貢献してまいります。


バイナリー発電設備
 高温流体の熱を用いて低沸点媒体を沸騰させタービンを回し発電する設備。高温流体のサイクルと低沸点媒体の2つの(バイナリー)サイクルを持つことからバイナリー発電という。投入した高温流体の成分や流量を変動させることなく回収できるため、温泉の効能や湯量に影響をもたらさない。


以上

JFEエンジニアリング株式会社 福島県土湯温泉における温泉バイナリー発電の事業化調査に着手


 http://www.chikaikyo.com/index.htmlが発表した2011.9.22「東北6県の地熱開発有望地区について」(プレス発表)をみると、磐梯地区の潜在的地熱発電量は125〜250万kWとなっており、原発2基分に相当する。
 バイナリー発電とは耳慣れない言葉だが、既に九州電力丁原発電所で実用化されている。地熱バイナリー発電方式についてに原理が詳しく記載されている。掘削をして高温の蒸気を得る従来の地熱発電方式と違い、既存の温泉設備を生かした方式であるため、温泉発電と表現することもある。発電量は従来型のものと比べ少ないが、実現可能性が高い方法として注目されている。
 土湯の魅力 | 土湯温泉観光協会【公式】を見ると、温泉湧出量は毎分約1,800リットルとなっている。土湯温泉はこの量で1000kW級の発電がまかなえることになる。一方、八丁原発電所は、64.14トン/時(約1.07トン/分)で2000KW/hとなっている。


 土湯復興をみると、次のような記載がある。

 東日本大震災東京電力福島第一原子力発電所の事故による風評被害により土湯地区にあった5旅館が廃業、1旅館が長期休業となり、温泉観光地として土湯大火以来最大の危機を迎えています。
平成23年11月1日 第1号)

 土湯温泉の復興の柱のひとつとして、地熱と小水力という再生可能エネルギーを利用した発電事業の導入を目指しています。このたび、その可能性を調査するため、昨年12月に環境省が被災地限定で公募した「再生可能エネルギー検討委託」業務に応募したところ、見事採択となりました。


(中略)


 この他にバイナリー発電とあわせて小水力発電についても検討開始に入りました。この小水力発電の候補地としては、東鴉川(滝のつり橋の上流防堰堤)が適地として挙げられています。発電規模としては125KW/h程度であり、バイナリー発電規模と比べて小規模となります。
平成24年1月31日 第2号)


 バイナリー発電と小水力発電が、日本における再生可能エネルギーの柱となると、私は思っている。土湯温泉郷は苦難を乗り越えて新たなる産業を生み出そうとしている。