震災がれき処理、仙台市では順調

 震災がれき処理は、仙台市では順調にきている。一方、宮城県の他地域では苦闘が続いている。

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 仙台市がれき処理で、1日当たり300トンと最も処理能力が高い荒浜焼却炉(若林区荒浜)が1日、稼働した。これで計画していた3基がそろい、処理が本格化する。がれきの撤去も97%に達し、家屋の解体を除いて年内には完了する見込みで、仙台市では順調に進んでいる。

http://sankei.jp.msn.com/region/news/111202/myg11120202090000-n1.htm


 震災がれきの処理方針に関して、仙台市のホームページでは次のように紹介している。

3.がれき類の処理について


 今回の震災によって発生したがれき類は約135.2万tと見込まれますが,これは仙台市が平時に処理を行う生活ごみや事業ごみの約4年分の量に相当します。
 本市では,津波被害によって膨大ながれき類が発生した東部沿岸地区に3箇所の「がれき搬入場」を整備しました。市域内のがれき類は,発災から1年以内にこれら搬入場への運び込みを終え,3年以内に処理を完了させることを目指しています。処理に当たっては,できるだけ資源化を行い(資源化率は50%以上),資源化できないものは焼却,埋立を行うこととしています。
 このため,がれき類の撤去に際しては,その場で可燃物・不燃物・資源物(金属など)の3種類に大まかに分けた後,各搬入場内において,さらに細かく分別を行います(約10種類)。資源化できるものは,それぞれリサイクルルートに乗せますが,資源化できない可燃物については,既存の焼却工場だけでは処理し切れないため,各搬入場内に仮設焼却炉を設置して焼却し,焼却灰は本市の石積埋立処分場(富谷町)において埋立処分することとしています。

http://www.city.sendai.jp/hisaishien/2-9-1tekkyo.html


 3箇所の「がれき搬入場」とは、蒲生、荒浜、井土のことである。いずれも甚大な津波被害を受けた場所である*1





 荒浜地区(2011年5月28日撮影)



 井土搬入場(若林区井土)に完成した仮設焼却炉。仙台市のホームページ*2より


 仙台市には、今泉、松森、葛岡の3箇所の焼却場がある。今泉工場は津波被災地近くにあったが、仙台東部自動車道の盛り土に守られ、被災を免れた。この3箇所の焼却場あわせて1800トンの処理能力があるところにさらに480トン分の仮設焼却炉を設置した。仮設ではあるが、ダイオキシン排出などの生活環境影響評価を問題なくクリアしている。
 もともと仙台市は、幸運にも放射性物質汚染が少なかった。16都県の一般廃棄物焼却施設における焼却灰の放射性セシウム濃度測定結果について (PDF:1,039KB)(平成23年8月29日)も、環境省の基準を満たしている。関東地方の方で宮城県より高値であるところが多く、かえって心配に思えてくる。
 仙台市の予定では、震災がれきの焼却・破砕等処理は3年程度で完了する見込みとなっている。沿岸部津波被災地にまとまった土地を確保できたこと、財政能力が高いことが迅速な処理に結びついている。


 一方、宮城県の他の地域では、震災がれきの処理はなかなか進んでいない。宮城県災害廃棄物処理実行計画(第1次案)【宮城県H23.8.4】をみると、沿岸部を気仙沼石巻、東部、亘理名取の4ブロックに分けて対応することになっている。「沿岸部の市町はこれまで生活地等からの廃棄物の撤去に重点を置かざるを得ず,処理については県による二次仮置き場での処理開始以降本格化する見込み」であり、「既設の焼却施設や最終処分場の余力,及び一定の規模の仮設焼却炉の設置等を考慮しても,被災地域内で処理を完結することは困難な状況」となっている。しかし、被災地から他地域へのがれき処理受け入れは遅々として進んでいない。予定の期間内に処理を終えることは難しいのではないかと悲観的観測を持つ。仙台市の仮設焼却炉は、自らの役目を終えても、近隣自治体で残っているがれき処理のため、獅子奮迅の働きを続けざるをえないのではないかと予測する。