被災地の介護施設で「震災関連死」が多発か?

 被災地の介護施設で「震災関連死」が多発している可能性があることが報道された。

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 岩手、宮城、福島3県の被災42市町村にある介護施設で、震災は生き延びたものの体調が悪化するなどして、5月末までに少なくとも616人が亡くなっていたことが朝日新聞の調べでわかった。生活環境の激変などが原因の「震災関連死」と疑われるケースが多数あったとみられ、3月に限れば死亡数は昨年同期の3倍近かった。

http://www.asahi.com/national/update/0717/OSK201107170244.html


 本紙の方に詳しいデータがあるので、まとめてみた。

  • 対象: 津波の被災地や東京電力福島第一原発事故の避難地域となった42市町村の管内にある特別養護老人ホームと介護老人保健施設の計219施設。回収施設159施設(入所者約1万2千人、回収率73%)。
  • 死亡者数(圧死、水死など震災による直接死を除く): 616人(死亡率約5%)。昨年3月中旬〜5月末は約300人であり、2倍にあたる。
  • 内訳: 80代と90代が8割。要介護5が半数。
  • 死因: 肺炎などの呼吸器疾患が3割。
  • 自治体ごとの特徴: 津波などで1千人以上の死者を出したところでは、介護施設で亡くなった人(直接死を除く)も昨年同期の約3.5倍と高い。震災の影響がより強かった3月中・下旬の死者が224人と多かったが、福島県だけは徐々に死者が増え、5月が59人で最多。
  • 事例紹介(1): 福島県南相馬市にある特別擁護老人ホーム「長寿荘」の入所者56人は、震災後9日目に栃木県の13施設に分散避難をしたが、5月末までに16人が亡くなった。
  • 事例紹介(2): 宮城県気仙沼市の特養「恵心寮」では、震災当日、入所者50人を施設2階に避難させた。翌日、体育館に避難したが、凍える寒さの中、88歳の女性が死亡。2日後に別の施設に移ったが、そこも電気が来ておらず、震災から1ヶ月で、9人が亡くなった。


 体調悪化した理由として、インフラが断ち切られる中で、食料(経管栄養剤、流動食)、燃料などが確保できなかったことがあげられている。同様のことが、在宅生活者にも起こったと考えざるをえない。いずれも、国の示した災害弔慰金の基準でいうと、「環境の激変」に相当する。しかし、災害関連死の認定が進まない中で、実態は全くつかめていない。