災害弔慰金、災害障害見舞金の適応となる状態

 http://www.bousai.go.jp/jishin/law/018-1.htmlをどのように適応するかが各自治体で問題となっている。http://www.mhlw.go.jp/bunya/seikatsuhogo/saigaikyujo4.htmlに簡潔なまとめがある。

災害弔慰金、災害障害見舞金の概要


○参考法令「災害弔慰金の支給等に関する法律」(昭和48年9月18日法律第82号)


1 災害弔慰金の支給


(1)実施主体 市町村(特別区を含む)
(2)対象災害 自然災害

  • 1市町村において住居が5世帯以上滅失した災害
  • 都道府県内において住居が5世帯以上滅失した市町村が3以上ある場合の災害
  • 都道府県内において災害救助法が適用された市町村が1以上ある場合の災害
  • 災害救助法が適用された市町村をその区域内に含む都道府県が2以上ある場合の災害

(3)受給遺族 配偶者、子、父母、孫、祖父母
(4)支給額
ア.生計維持者の方が死亡した場合 500万円
イ.その他の方が死亡した場合 250万円
(5)費用負担 国 1/2 都道府県 1/4 市町村 1/4


2 災害障害見舞金の支給(昭和57年8月から)


(1)実施主体 1に同じ
(2)対象災害 1に同じ
(3)受給者 (2)により重度の障害(両眼失明、要常時介護、両上肢ひじ関節以上切断等)を受けた方
(4)支給額
ア.生計維持者の方 250万円
イ.その他の方 125万円
(5)費用負担 1に同じ


 厚生労働省から発出した通知(平成23年4月30日)において、災害関連死に対する災害弔慰金等の対応という通知が出されている。関連死認定基準として、平成16年10月23日に起こった新潟県中越大震災関連死認定基準が紹介されている。

1 死亡までの経過期間

  • 平成16年10月中に死亡 → 震災関連死であると推定
  • 1ケ月以内の死亡 → 震災関連死の可能性が高い
  • 死亡まで1ヶ月以上経過 → 震災関連死の可能性が低い
  • 死亡まで6ケ月以上経過 → 震災関連死でないと推定


2 地震と疾病との因果関係
(1)偶然による事故 → ×
 震災後に屋根の修理で転落、 地面の凹凸による転倒
(2)故意 → 4「自殺」参照
(3)重過失 → ×
 適切な医療を受Iナる必要性を認識し、 受けることが可能であったにもかかわらず無視。
(4)因果関係の断絶 → ×
 1 地震の前から重篤であった既往症が死因(震災による増悪なし)・・・・癌等
 2 地震後に別の原因で発症した疾病が原因
(5)環境の激変 → ○

  • 病院の機能停止による初期治療の遅れ
  • 病院の機能停止(転院を合む)による既往症の増悪
  • 交通事情等による初期治療の遅れ
  • 選難所等生活の肉体・精神的疲労
  • 地震のショック・余震への恐怖
  • 救助・救護活動等の激務
  • 多量の慶灰の吸引

 但し、 判断にあっては次の点を考慮する。
① 死因が、肺炎・心筋梗塞心不全脳梗塞等ありふれたものについては、次により.震災との関速を緻密に判断する

  • 発症時期 ・・・・,・・・・生活が安定して以降の発症なら、×
  • 地震前の状態(高血圧・高脂質・持病等)・・元々のハイリスク者ではなかったか。
  • 高齢 ・・・・・・・元々衰弱(免疫力低下)しており、地震がなくても同様の経過を辿ったと考えられる。
  • 医師の追加診断書 (少なくとも関連性が否定されていないこと) が必要

地震のショックが原因と主張される場合、直接死因が、ショック症状の影響を受け得るものかどうか。

  • 癌、賢不全の発症又は増悪、脳出血等は、×

③第三者の過失 →×
1 既往症の憎悪、 直接死因の発症が明白な医療ミスあるいは不作為によってもたらされた場合
2 直接死因である症状の発見が選れ、 適切な処理ができなかったことについて、 医療側に明自な過失があった。
3 当該疾病と死亡の因果関係
(1)発症後、症状がまったく改善しなかったのか。

  • 一度改善した場合は、以降の悪化は震災によるものでなく、それ以降の原因によるものと考えられる。
  • したがって、症状改善により入退院を操り返しているケースは、×

(2) 発症以後、 適切な処置をとっていたか。

  • 本人の意志で医療を受けることを怠らなかったか。
  • 病院の不適切な処置はなかったか。

 重症にも関わらず、 入院継続や転院の措置をとらず、 退院させた。
※退院は、 原則として症状改善の擬制となる。


4 自殺
 故意(本人が任意に引き起こした)であることだけをもって一概に関違性を否定するものでなく、次の点を考慮し、判断する
(1)発作的なものでなく、精神的疾患に基づくもの。

(2)上記疾患が、震災を契機としたストレスによるものであること。


(注)1 上記の基準は、必ずしも、数値によりポイント化できるものではないので、個別に判断するしかないが、 著しくかけ離れるようなケースは排除していくこと。


 別紙4に新潟県中越地震において関連死と判定された具体例が記載されている。


 災害弔慰金が震災関連死を対象にしているのに対し、災害障害見舞金は震災関連疾患で重度後遺症を残した場合に支給されることになる。具体的な基準は明示されていないが、おそらく災害弔慰金の基準が準用されることになる。避難所生活中に重度脳血管障害を起こした事例は対象になるのではないかと推測する。通院困難なため、ワーファリンコントロールが不良となり、心原性塞栓を起こし経管栄養状態となった患者は該当すると考える。震災に伴うショックで心肺停止で搬送され無酸素脳症と患者も対象となると予測する。
 リハビリテーション目的で回復期リハビリテーション病棟に入院してくる患者のかなりの部分に震災関連疾患がある。重度であるかどうかに関わらず、3月11日以降の患者において震災との関連があったかどうかまとめる時期になっている。